さて、今まで靴磨きの道具やら、パートごとやらの記事を書き連ねてきました。
しかし、革靴の手入れ方法を1から10まで全て書いた記事は今までありませんでした。
早く書けよ、と言いたいところですが(笑)
何で今まで書かなかったのか不思議にさえ思います。
ここでいったん靴磨きの全ての工程をお話したいと思います。
目次
①馬毛のブラシでブラッシングをしてホコリを落とす
まずはここからスタートです。
靴の表面は見た目以上に汚れているものです。馬毛のブラシでホコリを落としていきます。
馬毛のブラシは毛先が柔らかいので、力を入れずにササっと払うようなイメージで使います。力を入れると、毛先がつぶれてしまうので細かいところに毛が行き届かないことになるので、本当に軽く軽く、というイメージで。この時に一緒にコバ周りも払ってしまいましょう。この作業だけでも、汚れの7~8割は落とせると言われているくらいなので欠かせません。逆を言えば、朝出かける前に10秒もブラッシングをするだけでも随分見た目を保つことが可能です。
②ステインリムーバーで汚れをとる
次に取り掛かる作業がステインリムーバーで汚れを落としていく作業です。油汚れやトイレなどでついた水や尿の飛び跳ねを落としていきます。
この作業で重要なのは古いロウ分を落とす事。
よく雑誌やブログなどでは、新しいクリームを入れるのと同時に古いクリームと一緒に入れ替わるから、リムーバーは使わなくてもいいという記述を見かけますが、私はそうは思いません。
古いロウ分は毛穴の奥底に堆積しています。
確かに新しいクリームを入れれば、表面のロウ分は入れ替わっていくでしょうが、奥底に固まっているロウ分までは取り切れません。
だからこそリムーバーの力を使って、綺麗さっぱり古いロウ分も溶かして取ってしまった方がいいのです。
こうすることによって、あとから靴クリームを入れたときに、新しく汚れていないロウ分と保湿成分が革の奥まで浸透し、見た目の美しさと保革が行えるのです。
リムーバーについて以前色々書き連ねた記事があるので、詳しくはこちらをご覧ください。
③コバ周りを整える
次に行うのが、コバ周りを整える作業。
コバとは、靴の土踏まず部分より前方を縁取る細い帯状の革、つまり「ウェルト」と呼ばれるパーツの中で、甲革よりも外側にはみ出ている部分を指します。別名で「エッジ」とも呼ばれます。コバはほとんどの靴についています。
このコバ周りが綺麗になっていないと、見た目の美しさを損ねてしまいます。
①の馬毛のブラシでブラッシングしても落ちない頑固な汚れは、コバブラシを使って、汚れを落としていきましょう。
汚れを落としたら、コバインキやコバクレヨンを使って補色していきましょう。
それぞれについて以前書いた記事はこちらからご覧ください。
④デリケートクリームで保湿する
デリケートクリームで保湿することは非常に重要な作業です。革に水分を十分に与え、革に潤いを与えることによって、革のクラックを防ぎます。
革靴はいずれクラック=ひび割れが起きてしまいます。しかし、そのクラックが起きるまでの期間を延ばし、靴の寿命を延ばすことは可能です。このデリケートクリームによって保湿する作業は革靴ににとって非常に重要なことです。
色付きのシュークリームにも様々な成分が含まれているので、保湿は多少できますが、水分が主体となっているデリケートクリームは保湿が目的なので、色付きクリームと併用して行うのがベストです。
私のおススメのデリケートクリームについて書いた記事はこちらからご覧ください。
⑤豚毛のブラシでブラッシングする(1回目)
デリケートクリームを塗ったら、豚毛のブラシでブラッシングを行います。
豚毛のブラシは毛先が硬いので、均一にクリームを延ばしていくことが出来ます。靴クリームを毛穴の奥へと浸透させ、革の目を潰していきます。結果として綺麗な光沢感が出やすいのです。
※なお、デリケートクリームは革を光らせるロウ分が含まれていないことがほとんどなので、この段階で光るということはほぼありません。
⑥色つきの靴クリームで補色する
デリケートクリームでしっかりと保湿をしたら、いよいよ色付きのクリームで補色をしていきます。この際、油性と乳化性のクリームのどちらを使えばいいのかわからない、という意見もありますが、基本はお好みです。
詳しくはこちらの記事を参考にしてみて下さい。
⑤の作業でデリケートクリームによって保湿が十分にできていれば油性のクリームでコーティングをしてピカピカにしてもいいのではないでしょうか。
私は革靴をより長持ちさせたいので、乳化性クリームを入れるように心がけていますが。
⑦豚毛のブラシでブラッシングする(2回目)
さて、色付きのクリームを入れたら、豚毛のブラシでブラッシングをしていきます。色付きのクリームには、デリケートクリームにはない光沢感を出すためのロウ分が含まれています。豚毛の硬い毛先によって、このロウ分が平らになり、光沢感をより強く出るのです。
豚毛のブラシでブラッシングをする作業は靴磨きには欠かせません!
豚毛のブラシについて書いた記事はこちらからご覧ください。
⑧仕上げに山羊毛のブラシでブラッシング
これは以前の記事でも取り上げていますが、豚毛のブラシでブラッシングをすると、その毛でブラッシングをした跡が残ります。これを最後にきれいさっぱり柔らかい毛先で表面を整えるのが山羊毛のブラシの役目です。
山羊毛のブラシについての詳細はこちらから
⑨鏡面磨きを施す(お好みで)
この鏡面磨きは本当にお好みといった感じですね。鏡面磨きを行う事によって、見た目の美しさとつま先の傷防止になりますが、革にロウを押し込んで光らせている行為なので、革に優しいか優しくないかと言われれば、全く優しくないといえるでしょう。
しかし、その光沢感は靴クリームで得られないものなので、結婚式などドレスアップしていくときは逆にしていけば、フォーマル感も高まり、あなたの品格を上げてくれること間違いありません。
鏡面磨きはその後のアフターケアさえしっかりできていれば、神経質になる必要のあるものではありません。むしろ革靴の奥深さを知れるチャンスなので、ぜひトライしてみて下さいね!
鏡面磨きの仕方の詳しい解説および鏡面磨きの落とし方は以下のリンクからどうぞ
革靴のお手入れは意外と奥深いものです。
そしてブラシ1つとっても、大別して馬毛のブラシや豚毛のブラシなどによって、その用途が大きく異なります。
革靴は手入れすればするほど、綺麗な光沢感を放ち、頼りになるかけがえのない1足へと変化していきます。
例えば、鏡面磨きは出来るようになるだけではいけません。その落とし方もしっかり学んでいないと、革靴の傷みを促進してしまう面もあります。こうやって革靴の事を知れば、あなたと靴の付き合い方は大きく変わるでしょう。
「足元をみられる」と言います。
元々の語源の意味とは違いますが、日常的に私たちが使う言葉で、「靴の手入れが行き届いているかいなかで、その人間性を見抜かれる」という意味で使われるシーンは多いかと思います。
手入れの行き届いた靴を履いているかいなかで、その人の印象は大きく変わります。
この記事で、革靴の手入れの仕方を覚えて、大人の品格もピカリと磨いていきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。