007シリーズで着用している、クロケット&ジョーンズの靴の紹介。
今日はホールカットのAlex(アレックス)というモデルについて紹介です。
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まずは、ホールカットの靴の基本的な情報を抑えましょう。
目次
ホールカットの靴はフォーマル?カジュアル?
ホールカットとは一枚の革で構成された靴です。継ぎ目は踵の部分などでつなぎ合わされていることが多く、何も飾りのないシンプルなデザインが楽しめる靴です。(※例外でパーフォレーションをあしらったり、あえて土踏まずからシューレースの方へ曲線を描いた継ぎ目を見せているデザインもあります)
一枚の革を靴の形に癖付けることは難しく、メーカーの力量は一発でわかるという、靴メーカー泣かせのスタイルの靴です。
また、良質な革を使わないといけないという点もあります。
良質でしなやかな革でないと、綺麗に木型に革を釣り込めなかったり、履いたらすぐに妙なシワが入ったりと、すぐに素材の良
し悪しがわかってしまう靴なのです。
ホールカットの靴は、靴の原型のようなものです。
そしてフォーマル度の高さは、どう評価していいか難しい靴なのです。確かにシンプルで飾りのない靴なので結婚式などのフォーマルな場に履けそうですが、いざ黒のスーツに合わせたりすると、シンプルすぎて足元が浮くという感じです。締まりがないという言葉が適切かもしれません。
ですから、そのフォーマル度に関しては正直に言うと「なんとも言えない」という感じです。
友達の結婚式で、ドレスコードの高くない式典などで履くくらいがちょうどよいのかもしれません。
ビジネスシーンであれば、よほど重要で服装に厳しい場でない限りは、どのシーンでも合わせて使える靴です。
ジェームズ・ボンドはフォーマルシーンに履いています
このAlexは2012年に公開された「Skyfall」、そして2015年に公開された「Spectre」の両作品ともに使われている稀有な靴です。
さて、ジェームズ・ボンドはどのシーンで履いているかというと、「Skyfall」ではマカオのカジノのシーンにおいてです。そして「Spectre」においてはモロッコの列車のシーンにおいてです。
この2つのシーンの共通点は、ジェームズ・ボンドがタキシード姿であるということです。
タキシードは夜の礼装ですから、極めてフォーマルな装いです。
そこにホールカットの靴を持ってくるというのが、いかにもボンドらしい「捻り」です。
通常タキシードにはホールカットの靴は合わせません。オペラパンプスなどを合わせるのが最上のフォーマル姿です。
しかし現在ではそのような格好をするシーンもほとんどないので、内羽根のストレートチップ、もしくは内羽根のプレーントウのシューズなんかを合わせるのが正式な装いとされています。
かつてショーン・コネリー扮するジェームズ・ボンドがタキシード姿にロレックスのサブマリーナというスポーツウォッチを合わせていました。今でこそフォーマルなシーンにおいても、サブマリーナのようなスポーツウォッチを合わせる人が増えましたが、1960年代当時としては大変斬新なもので、固定概念を打ち壊しドレスコードを大きく変えた「捻り」の利いたファッションでした。
ですから、フォーマルシーンにおいてジェームズ・ボンドがAlexを履いているのは、ロレックスのサブマリーナと同じく、ファッションの常識を破る、新しいスタイルの創造と言えるでしょう。
こちらの靴に使われているのも、ジェームズ・ボンドが履いている他のクロケット&ジョーンズのドレスシューズと同じく、
ロングノーズで先端が細めのチゼルトゥ、そしてサイドのエッジが利いた、パリ発の主力ラスト「348」です。
ホールカットはシャープな「348」ラストが際立つスタイルです。
これによりタキシードに合わせてもおかしくないような空気感が出るのでしょう。
使用しているソールは、やはりダイナイトソールです。実用性に富んでいます。
タキシードとはいかないまでも、普段のスーツ姿には抜群に合い、それとなく人と違う雰囲気を出せるホールカットの靴も、一足持っていると面白いですよ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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