ブラックラピド製法の特徴って?軽くて丈夫!オールソールも楽々!
グッドイヤーウェルト製法、マッケイ製法とその特徴についてお伝えしてきました。
本日お伝えするのはブラックラピド製法についてです。冒頭のような謳い文句がブラックラピド製法の強みです。
あまり聞き慣れない製法かと思いますが、主にイタリアブランドの靴に使用されることの多い製法です。今回はこの製法について説明していきます。
目次
ブラックラピド製法の特徴
ブラックラピド製法(ブレイクラピド製法、ブレイクラピッド製法とも呼ばれます)、
名称はマッケイ製法の別名であるブレイク製法の「ブレイク」というところと、グッドイヤーウェルト製法よりも早く仕上がる=「ラピド」というところから付けられています。
甲革を丸め、中底とミッドソール(中板)を出し縫い(マッケイ縫い)をかけます。
これで一回目の出し縫いは終了。
そして仕上げにウェルトのように外側に出ているミッドソールに、ソール(本底)をつけて2回目の出し縫いをかける製法です。
簡単に言うと、いったんマッケイ製法で仕上げた後、ウェルト代わりとなっているミッドソールとアウトソールで挟み込み、出し縫いで縫い上げる製法ということですね。
マッケイ製法はソールの返りが良く、軽くて履きやすい靴に仕上がるという特徴を持っていますが、グッドイヤーに比べると耐久性に劣ります。
グッドイヤーウェルト製法は耐久性の高い靴に仕上がりますが、履き心地は硬く、履き馴染みに時間もかかります。
ブラックラピド製法は、その二つの長所を良いとこ取りしたような製法です。
ブラックラピド製法ではマッケイ製法の短所である耐久性と耐水性の低さを、アウトソールを出し縫いで貼り合わせることで改善しています。また。グッドイヤーウェルト製法の長所である、オールソールが容易であるという良い点を引き継ぎ、短所である重さを改善しています。
まず第一にグッドイヤーウェルト製法の返りが悪く、履き馴染みが悪くなる一番の要因はリブテープなのです。
このリブテープ、触って曲げようとしても本当に曲がらないですし、ただの革一枚の中底であれば曲がるのに、このリブテープが接着されただけで、途端に曲げるのに力がいるようになります。
その一方でブラックラピド製法はリブテープを使わないので、返りの良さはグッドイヤーウェルト製法に比べ抜群に良いのです。
ただし、リブがない分、中物を入れる隙間はほとんどなく、入れることが出来て薄いスポンジが入れられるくらいです。なかにはコルクを入れるところもありますが、グッドイヤーウェルト製法で敷き詰められるコルクと比べて薄くなるのは必然です。
ゆえに長時間の歩行などは、グッドイヤーウェルト製法の方に軍配があがるかもしれません。
ブラックラピド製法はマッケイ製法を応用した製法なので、使われている中底は薄いのが特徴です。グッドイヤーウェルト製法に比べ耐久性は落ちますが、純正のラスト(木型)がなくても中底に癖付けることができるので、中底の交換が実質的に可能です。
このアドバンテージは非常に大きいかと思われます。
グッドイヤーウェルト製法の場合、中底も厚く堅牢にしている分、製造の際に、絶対に中底をその靴を形作る純正のラスト(木型)に吊り込んで、中底を癖付けしなければならないからです。
ゆえにグッドイヤーウェルト製法の靴は中底が壊れた時はまず直すのが非常に難しくなってしまう事態に陥りやすいのです(特にインポートシューズの場合、純正のラストが日本国内に存在しないので修理は絶望的になる)
ブラックラピド製法の長所
- グッドイヤーウェルト製法に比べ軽さがあり、履き馴染みしやすい
- マッケイ製法に比べ、オールソールがしやすい
- 底に厚みがでるため、耐水性がある
- マッケイ製法の耐久性の低さをカバーしている
ブラックラピド製法の短所
- 中底はマッケイ製法同様、薄く柔らかいので傷みは早い
- マッケイ製法ほど軽くはならない
- グッドイヤーウェルト製法のように、中物はほとんど入れられないので、クッション性は高くない
- ウェルトがつくので、デザイン性の自由さは損なわれる
まとめ
ブラックラピド製法の靴は、マッケイ製法と同じくグッドイヤーウェルト製法よりも簡単に早く作ることが出来ます。
しかし、工程は増え、パーツも増えるために値段も高い靴に採用されることが多いです。
具体的なブランドでいうと、サントーニなどがあげられます。
マッケイほどの軽さは出ませんが、オールソールをしやすいという利点は、他の靴にはなかなかない点です。
ただし、過信は禁物です。ブラックラピド製法の多くはイタリア靴に見受けられます。
イタリア靴は履き心地の柔らかさを優先することが多いので、革も柔らかいものを使う傾向にあります。ゆえに甲革にクラックとかは入りやすく、そうすると直せたとしても見た目的に寿命ということも十分ありえます。
クラックが入るほど履いたのなら、靴も十分寿命を全うしたといえますが。
靴への耐久性と適度な軽さを求めるのであれば、この製法で作られた靴を選ぶのがベターでしょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。