革靴のフォーマル度を教えます Church’sで学ぶ革靴フォーマル番付

さて、チャーチの内羽根の靴を勢揃いさせた記事から連動して今回の記事を書きます。

今回の記事は革靴のフォーマル度をきちんと理解しよう、というのがテーマです。

それには、前回写真を出したチャーチの内羽根の靴をみるのが最適です!

今、気候変動によってクールビズ、ウォームビズが進み、服装の変化も大きく出ています。

夏場はノーネクタイというところも、早いところであれば5月にはクールビズというところもあります。

ほとんどなのではないでしょうか。

そう考えるとスーツはいらなくなる…?と短絡的に結びつける人もいるかもしれませんが、そんなことはありませんよ。

ビジネスシーンにおいて、ウォームビズを進めるのであればスーツは厚着に戻らなければならず、フランネルのスーツなどに焦点を当てなければならないはずです。

そんなファッションが多様化する中で、また悩みになるのが靴。

ビジネスシーンにおいて、どんな靴が適しているのか?

わからない人も多いのではないでしょうか?

最近はスーツにローファーを合わせる人もチラホラ見かけるようになっていますが、やはりビジネスシーンでは、本来紐靴こそ履くべき靴。

紐靴以外であれば、レイジーマンタイプのサイドエラスティックシューズやモンクストラップシューズがぎりぎりでしょうか。

それでは、まず本題に入る前に、ビジネスシーンで履く靴のスタイルを大別して見ていきましょう。

目次

紐靴:内羽根の靴と外羽根の靴

紐靴には大きく2つにわかれます。

まず1つが内羽根です。

「内羽根」とは羽根が甲まわりと一体に縫い付けられたデザインのものを指します。

フォーマル度が高い秘密はそのルーツにあります。イギリスの王室でアルバート公が1853年にこのスタイルでミドルブーツをオーダーしたのが起源と言われています。

こうして内羽根式の靴は当時の正装であるパンプスから、主にフォーマルユースや室内執務用の靴として普及してゆきました。

羽根の部分が全開しないため、外羽根の紐靴に比べるとフィット感の調節には劣ります。

そして内羽根の靴と対比されるのが外羽根の靴です。

甲革に別のパーツとして、外側から縫い付けられているのが「外羽根式」と呼ばれるものになります。

この靴のルーツは、軍用の実用靴にあります。

特徴は羽根の部分が全開するので、着脱が比較的素早くできるうえに、フィット感の調節も容易にできる点に優れています。

特に甲が高い人には、羽根の圧迫が内羽根式のものと比べて強くないため重宝します。

この内羽根の靴と外羽根の靴の違いについては、詳しく当サイトで以前記事にしているので是非ご覧ください。

→内羽根と外羽根の違いを解説

スリッポン系の靴

ローファーやシングルモンクストラップシューズなど、紐が付いていない靴は、フォーマル度は下がります。

ローファーはその出自は貴族の書記官が室内履きにしていた、現代でいうスリッパ的な靴です。

タッセルローファーはアメリカの弁護士が履いていたという話もありますが、それはともかくとしてやはり格式の高い場で履く靴ではないことは間違いありません。

ダブルモンクストラップシューズは、ウェルドレッサーといわれたウィンザー公が空軍の人間が履いていたアビエーターシューズから着想を得た靴であり、これもまたドレス度は高くないといえます。現代においては、キャップトウ式になっているダブルモンクが主流なので、カチッと見えやすいという観点からかビジネスシーンで履く人は増えています。しかし、その出自を考えれば、ここ一番のシーンでは紐靴にしたいところです。

唯一シングルモンクストラップシューズだけは、17世紀頃から僧侶の人間が履いていた靴がその出自となっていることから、紐靴の代わりに履いても違和感ないフォーマル度の高さを持っています。


バックルの色や大きさなどによって大きく印象が変わるのがシングルモンクストラップシューズです。
この写真のようなスタイルのシングルモンクが基本です。

ただし、例えこの靴が仮に黒であったとしてもバックルの色が金色なので、少し見え方は華美にみがちかもしれません。TPOに合わせて、時にはやはり紐靴を選ぶというのはとても重要なことです。

ビジネスシーンでは内羽根式の黒靴を履いていれば間違いありません

さて、このように、普段何気なく私たちが履いている革靴にはそれぞれのスタイルにそれぞれの歴史があるのです。

これからはその歴史を踏まえたうえで、現代のビジネスシーンに焦点をあてて、革靴のスタイルを考えます。

現代のビジネスシーンにおいて、どのスタイルの靴を履いていれば問題がないといえるのでしょうか?

輝けライフ!の答えは…

内羽根の黒靴を履いていれば問題がないといえる

です。

それでは内羽根の靴を最もポピュラーでフォーマル度の高いストレートチップの靴から、カジュアルとされるフルブローグの靴まで見ていきたいと思います。

こちらの写真は前回の記事でも紹介したチャーチの内羽根の靴を並べたものです。

写真向かって左から右に移るごとにフォーマル度は下がっていきます。

それでは、最もフォーマル度が高いとされる内羽根のストレートチップの靴から見ていきましょう。

内羽根のストレートチップ

最もフォーマルで、どんな服装にも過不足なく合わせることの出来る靴が内羽根のストレートチップの靴です。

結婚式やお葬式など、冠婚葬祭の場面においても最も活躍する靴です。

それは世界基準で言えるようで、どんなに奇抜なデザインを得意とするブランドであっても、この内羽根のストレートチップの靴を用意していないブランドを見ることはありません。それだけ最もオーソドックスな靴だということです。

シンプルな分だけブランドの方向性や力量などが一発でわかる難しい靴でもあるため、どのブランドも黒の内羽根ストレートチップの靴は妥協なく作っています。

当然ビジネスシーンにおいて内羽根のストレートチップの黒靴で見劣りする場面などありえません。

誤解がないように付け加えていえば、内羽根のストレートチップの靴でも役不足というシーンはあります。しかし、それはノーベル賞授賞式など、厳格な式典でドレスコードに従ったフォーマルなスタイルになる必要がある場合で、そういった時はオペラパンプスなどを履くことになります。

このような厳格なフォーマルスタイルが求められる場面は人生、特に日本においては、まずないですし、ましてやビジネスシーンでオペラパンプスを履かなければならないシーンはないですから、あまり気にしなくていいでしょう。

成熟した良識ある大人の男であれば、一足は必携です。

内羽根パンチドキャップトウ

パンチドキャップトウとは、キャップのラインだけがパーフォレーションになっているものを指します。

内羽根ストレートチップの靴についでフォーマルな靴といえ、逆に華やかな結婚式などであれば、この内羽根パンチドキャップトウスタイルの靴でも過不足なく使うことができます。

逆に穴飾りがある分だけ、お葬式のような場面では使いにくいです。

人によっては、中途半端なデザインが入っており使いにくく感じるかもしれませんが、フォーマル度は依然として高いので、何ら気後れすることはありません。

内羽根クオーターブローグ

個人的なイメージですが、世間一般の会社員が無難という理由で選ぶデザインはこのクオーターブローグまででしょうか。

パーフォレーションもあり華やかさがありつつ、派手さがないので主張することは全くありません。非常に使いやすい靴であると思います。

あえて悪いところを指摘するならば、デザインが中途半端なところです。

可もなく不可もないようなスタイルは、抽象的な表現になりますが、靴全体が「ぼやっとした」雰囲気になることもあります。

お洒落が好きでたまらない人には物足らなく感じることがあるかもしれません。

内羽根セミブローグ

ここからが一般の会社員が履いているのが見かけなくなりつつあるスタイルになるでしょうか。

クオーターブローグのキャップにメダリオンが入ったのがセミブローグです。

一気に華やかな雰囲気が高まりますが、一文字のキャップによってまじめな顔つきも残している優れものです。

ぜひ、一度も履いたことのない人には食わず嫌いをせずに、履いていただきたい靴のスタイルです。

個人的にはダブルモンクよりも、このセミブローグを履くべきとさえ思っています。

フルブローグの靴だと派手すぎる、という方には最適の靴でしょう。ジャケパンスタイルが好きな方であれば、クオーターブローグやパンチドキャップトウよりも、セミブローグシューズ以上の飾りのある靴がおすすめです。

内羽根フルブローグ

最もカジュアルとされるのがフルブローグシューズです。フルブローグシューズは、その歴史を紐解くと、狩猟用の靴などに由来する靴です。

そういった歴史背景もあり、靴単体でみると、確かに文字通りの羽根の形をしたパーフォレーションの形から、派手でカジュアルな靴に感じるかもしれません。

しかし、その実内羽根式になると、かなり顔つきはまじめな雰囲気になり、重厚感も相まって履いている人の風格を足元から与えてくれます。

茶色でもジーンズに合わせると、結構ビシッとした雰囲気になり、上はきちんとしたジャケットを羽織りたくなるほどです。

ジャケパンスタイルですら「黒の内羽根フルブローグ」になると、その見た目の軽快さに対して重厚感があるほどです。

そういった意味で、フルブローグシューズも含め、内羽根のタイプの靴は全てビジネスシーンにおいて、差し障りのない誠実な靴だということをよく覚えておいていただければと思います。

外羽根の靴はフォーマル度がそんなに下がるの?ビジネスシーンでは使いにくい?

そうなると、外羽根の靴は、内羽根の靴に対して全てフォーマル度が下がるのか?

ということになってきます。

その答えは「下がる」と思っていただいて結構です。

しかし、3アイレットのプレーントウダービーの黒などであれば、とにかくシンプルで清楚なものは、黒の内羽根ストレートチップに準ずる品格が出てきます。

番外編①内羽根のプレーントウ

さて、ここからは番外編です。

実は内羽根ストレートチップよりも、さらに格上の内羽根の靴があります。

それは内羽根のプレーントウです。

メディアによっては、黒の内羽根ストレートチップよりもカジュアルと表現しているところもありますが、それは明らかな誤りです。

※これはチャーチのラスト108 Gloucester(グローチェスター)です。

もともとストレートチップの靴というのは、軍隊がつま先の補強のために革を充てたところに由来する靴です。

対して内羽根のプレーントウというのは貴族が式典の時に履いていた靴です。

両者の歴史から紐解けば、貴族の靴と軍隊(下々の民)の靴という出自の大きな差があるのです。

ですから、内羽根のプレーントウの靴は、エナメルが使われているものも多く、そのフォーマル度はオペラパンプスと同格です。タキシードや燕尾服とあわせるような靴なのです。

しかし、そのまじめすぎる顔つきゆえか、ビジネスシーンではスムースレザーでもかなり畏まってみえます。そのためあまり見かけることのないスタイルの靴です。

番外編②どのセオリーにも当てはまらないデザインの靴は?

これはチャーチのNiton(二ートン)です。

中にはこのようにウイングチップの変形の物や、キャップにだけメダリオンが入っている靴など変形の靴もしばしば見受けられます。

こういった靴は、基本をひねったような靴なので、どれほどフォーマル度が高いものか?という明確な分類が難しくなります。

ひとつ大きな基準があるとするならば、それはキャップにメダリオンが入っている靴は、冠婚葬祭には不向きなカジュアルシューズということができます。

例えばストレートチップの靴で、キャップ(つま先)にだけメダリオンが入っている靴の方が、純然たるセミブローグの靴よりも浮ついた雰囲気に見えることもあるのです。

また、ホールカットの靴もプレーンで清楚な靴なのですが、その位置づけは微妙。

※これはチャーチのMonte Carlo(モンテカルロ)です。

最近ではタキシードなどに合わせることもあるようなので、そのドレッシー度をつけるのは困難です。例外の靴として覚えておいてください。

個人的にはクオーターブローグと同格くらいかな?と感じています。

やはり基本が大事

番外編②にもあるように、基本に忠実でないデザインの靴は、かっちりした雰囲気にしたいときに不向きなことがあります。

今回チャーチで紹介した基本の内羽根の靴5モデルは、基本に忠実であり、ほとんどの場面で相手に対して失礼に当たらない靴になります。(黒の3アイレットダービーも)

これらの靴を履いていれば、ことにビジネスシーンにおいて困ることはありません。

靴を3足でまわす、というのでは私は数が絶対的に足りないと思っています。

やはり黒の靴で5足は必要でしょう。

その5足を揃えるのであれば、本日紹介した、内羽根のストレートチップからフルブローグまでがおすすめです。

ご参考になれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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