以前、ウイングチップの靴はエドワード・グリーンのマルバーンとチャーチのチェットウィンドが2大巨頭だという持論を語ったことがあります。
イギリス靴ブランドは全てのブランドでウイングチップの靴を出していますが、マルバーンとチェットウィンドの2モデルを超える傑作というのは、なかなか見かけません。
かといって、他のブランドのウイングチップが劣っているかというと、そういうわけでもありません。
とことんカントリーな雰囲気を漂わせるウイングチップが欲しければ、トリッカーズのウイングチップを探せばいいと思いますし、上品なウイングチップが欲しければジョン・ロブから探せばいいでしょう(個人的にはあまりに上品すぎてウイングチップの良さがなくなる気がしますが)。
それに、いくら名モデルといえども、ラストが合わなければ何の意味もなしません。
革の風合いもブランドによって、違いますから靴から出ている表情も全く異なります。
ですから今回の記事は、チャーチやエドワード・グリーン以外のウイングチップにクローズアップするということで、クロケット&ジョーンズのウイングチップの代表作「CLIFFORD」について紹介していきたいと思います。
クロケット&ジョーンズ CLIFFORD(クリフォード)
クロケット&ジョーンズではあまり語れることが少ないウイングチップのデザイン。
その中でキラリと光る隠れた名作がこのCLIFFORD(クリフォード)です。
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オードリーと同じラスト「337」を採用したノーズが眺めでナチュラルなスクエアトウと、特徴的なブローグが印象的な靴です。
クロケット&ジョーンズの最高級ラインである「ハンドグレードライン」の靴ですから、もちろん素材は最高級。そして履き馴染みも柔らかな革を使っているので、苦労せず履けます。
クロケット&ジョーンズは、カントリーブーツのスタイルであれば、以前紹介したIslay(アイラ)やSkye(スカイ)といったウイングチップの名作があるのですが、短靴のウイングチップはこれといったモデルを聞きません。
なぜ、クロケット&ジョーンズほどのメーカーがウイングチップの代表作が生まれないかを考えるに、クロケット&ジョーンズはイギリス靴ブランドの中でも、最もスマートで都会的な靴を作ることを得意としているメーカーだからではないかと推測しています。
基本的にウイングチップのような靴はちょっと野暮ったいくらいのほうがカッコいいんです。
田舎の泥道を歩くために、通気性をよくするのを目的として穴をあけた靴がウイングチップの原型です。
ですから、クロケット&ジョーンズのような都会的な短靴よりも、チャーチなどのちょっとおっさん臭い靴の方がウイングチップのデザインとはうまくハマるんです。
このクロケット&ジョーンズのCLIFFORD(クリフォード)はその意味で都会的なフルブローグに挑戦した1足といえるでしょう。
ウイングチップの「W」の字とトウの間隔を長めにとると都会的に、短めにとると無骨なイメージになりますが、CLIFFORD(クリフォード)は前者。
間隔が長めにとられたウイングチップは、間延びして見えることが多く、全体が引き締まらないことが多いのですが、CLIFFORD(クリフォード)はメダリオンも縦長の、クロケット&ジョーンズのブローグシューズにはおなじみのメダリオンをあしらっており、どこまでもノーズの長さを活かす流麗なウイングチップにしています。
これが驚くほどきれいにまとまっているんです!
さすが、幾多のOEMを手掛けてきた老舗靴メーカーといったところです。
他のイギリス靴ブランドが出しているような、野暮ったいウイングチップを出すのではなく、あくまでもクロケット&ジョーンズにしか出せない雰囲気のウイングチップを出していると感じます。
ウイングチップで洗練された雰囲気を感じさせるモデルをお探しの方はこれで決まりです!
最後まで読んでいただきありがとうございます。
クロケット&ジョーンズ ハンドグレード ウィングチップ クリフォード ブラック(CROCKETT&JONES CLIFFORD BLACK CALF)
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