GRENSON/グレンソン 質実剛健の英国靴を語る!

イギリス靴ブランドを今までいろいろと紹介してきましたが、残すはチャーチくらいで、メジャーで比較的どこのお店でも手に入りやすいブランドは少なくなってきます。

しかし少なくなってくるだけであって、決して品質が悪いというわけでなく、素晴らしい靴ブランドはイギリスにまだあります。

その1つがGRENSONです。

目次

グレンソンの歴史

始まりは1866年、革靴職人のWilliam Green(ウィリアム・グリーン)氏が英国ノーサンプトンシャー州の首都である、ノーサンプトンから少し離れた州境の町、ラシュデンで小さな靴工房を開いたところからグレンソンの歴史は始まりました。グレンソン当時の社名は「Green&Son」

でした。グリーンとその息子という意味です。これがのちに縮められてGRENSON(グレンソン)と呼ばれることになったのです。

ここで注目したいのが創業年。

1873年創業のチャーチや1879年創業のクロケット&ジョーンズよりもずっと早く創業しているのです。

歴史も深いブランドです。今一度このグレンソンの靴を注目して欲しいです…。いや、本当に。

1874年、ウィリアム氏は最初の靴工場を開業します。

1874年に建てられた最初の工場は、創業者の名前から「Greens Yard」と呼ばれました。実はグッドイヤーウェルトを世界で初めて導入したのも、このグレンソンの工場であったと言われています。

当時の靴の生産体制は、ある工程に特化した職人が各々の家の庭で作業場を設け、分業していたのです。

分散していた生産体制を1つの工場に集結させることによって、生産性とクオリティの均一化が可能となりました。

グレンソンのみならず、この1870年代~1890年代に誕生した多くのイギリス靴メーカーは、同じようなビジネスモデルを進めていきます。

1895年には法人化し、1911年に工場をさらに拡大。量産可能な最高の製法である”グッドイヤーウェルト製法”で一足あたり約200の工程で8週間費やして製造するスタイルがこの時点で確立しました。

グレンソンのブランドとしての実力を物語っているエピソードがあります。
1974年に上映された映画史に残る名作「華麗なるギャツビー」で、衣装を担当したラルフ・ローレン氏によってグレンソンの靴が選ばれ、劇中で使用されたのです。


1980年代には他の英国シューメーカーとともに日本国内でも高級靴と言うジャンルが上陸し始めましたが、グレンソンの日本上陸は少し遅く、1999年に大塚製靴が輸入代理店を務めることになり、ようやく日本市場でも手にすることが出来るようになりました。

2000年に入ると、シューデザイナーのTim Little(ティムリ・トル氏)がグレンソンのクリエイティブディレクターに就任し、堅実なイギリス靴を作る一方で、モダナイズされた靴も作り始めます。

そして2010年にリトル氏はグレンソンそのものを買収します。氏はもともと広告業界で働いていたこともあり、”イノベーション”を好みます。それこそがモダナイズするということなのです。

リトル氏はモダナイズするということについて、このように語っています。

シンプルで本物の地に足がついた靴作りを誠実に行いつつ、見せかけのデコレーションではなく、削ぎ落としてミニマルにしていくことが、大切だと考えています。素材を追求したロンドンのレストランが受け入れられているのと同じ事です。

例えば、イーストロンドンの若者の間で60~70年代のシューズが流行っていますが、一つはビンテージに見えることがファッションの要素になっているという点、もう一つは地に足のついた方向性、つまり本物指向に魅かれているという点だと思います。

80年前のウイングチップパターンだけど、スニーカーソールにすることで素材はモダンになる。あるいはクラシックな靴だけどソールのサイドを手塗りすることでモダンに感じるなど様々なアプローチがあります。ただ付け足すことは簡単なことなのですが、むしろ、どういうタイミングでモダンに感じるかが重要な視点だと考えています。

出典:Journal Cubocci

この「地に足のついた」というところがイギリス靴としての矜持をいまだに持ち続けている証拠でしょう。

確かに、グレンソンはスニーカーソールのモデルを出したりなど、新たな取り組みを試みているものもありますが、質実剛健なモデルも出しているのも事実。

価値観が多様化した現代において、個々のニーズを正確にとらえているところは、歴史と技術のあるメーカーならではでしょう。

グレンソンが注目されない大きな原因

さて、ティム・リトル氏が社長になって以来、新しい風が吹いているグレンソンですが、あまり日本でフューチャーされないのはなぜでしょうか?

まず、日本に入ってきて、日が経っていないブランドということがひとつ大きな要因として挙げられます。

まだまだ日本の革靴好きに浸透するだけの、露出が圧倒的に少ないんです。

だからグレンソンの靴を見てみたくても、置いている店自体が少ないのです。

都内であれば、西武池袋本店が一部取り扱っていますが、それでもモデルが豊富になっているわけでもありません。

それは、輸入代理店の大塚製靴があまり気合を入れていない(苦笑)というのが原因で起きているですね。現に大塚製靴の楽天市場店では売り切れたまま補充する気配もありません。

また、スニーカーソールコレクションなどの一部のモデルは、縫製は下請けのインドで行われているというのも革靴好きの人からすると懸念を示す部分なのかもしれません。

グレンソンって微妙?いえいえビスポークもしているんですよ

他のイギリス靴に比べると上記の理由で、影に隠れがちなグレンソンですが、本国ではビスポークも行っている、紛れもないイギリス靴ブランドの雄なのです。

もちろん個人のためのラスト(木型)を削り出すことから始めます。

日本からだとオーダーはなかなか難しいでしょうが、本国のホームページからメールで問い合わせをすることができます。

グレンソンのコレクションライン

さてさて、そんなビスポークもしているグレンソンですが、既製靴のラインは主に4種類あります。

G Zero

グレンソンの中でも最も高級なラインです。

革はワインハイマー社のとろけるような光を放つボックスカーフ、スエードはチャールズ・F・ステッド社の中の最も高品質なスエードを贅沢に使っています。エドワードグリーンの革と比肩するレベル。

個人的な印象としては、このG Zeroコレクションのほうが、圧倒的にクロケット&ジョーンズのハンドグレードよりも質も作りも素晴らしいと思います。

インソールのロゴには、「G Zero」もしくは創業者の「William Green」の名前が刻まれています。

ソールもベイカー社のオークバークソールが使われており、出し縫いが見えないヒドゥンチャネル仕様。とてもとても上質です。

日本ではほとんど展開されていないので、大変希少なラインです。

 G One

グレンソンのドレスシューズでは、レギュラーラインより上質なものです。

ランクとしては、チーニーより上質、チャーチにちょっと劣る感じでしょうか。

革はフランスのタンナーのアノネイの革を使っています。

イギリス靴を絵に描いたようなコレクションです。

 G Two

製造をインドで行っているものです。インソールが赤いのですぐにわかります。

もちろん監修はイギリスでパターンの作成などを行うため、決して品質的に悪いものではありません。

この写真のアーチーというウイングチップのモデルは、同じモデルネームで色々な素材や色が用意されていて、中にはスニーカーソールを搭載していたりします。

このアーチーを取ってみても、色々な試みを行っているのがよくわかるコレクションです。

価格も求めやすく設定されており、モダナイズされた中に、しっかりとイギリス靴らしい雰囲気を感じられます。

 Triple welt

トリプルウェルトコレクションは、トリッカーズのカントリーシューズのような、イギリスカントリーを地で行くコレクション。

名前に違わぬ強烈に張り出したコバと、ソールの厚みが本来のカントリーシューズを現代によみがえらせています。

シボ革を使っていることが多く、素朴な感じが好印象です。

革はトリッカーズよりも明らかに上質で、クロケット&ジョーンズのカントリーシューズを彷彿させます。当然作りも精緻です。

しかし、デザインはクロケット&ジョーンズよりも、もっと田舎臭さのあるカントリーシューズです。

クロケット&ジョーンズのカントリーシューズとトリッカーズのカントリーシューズの中間にいる感のコレクションといったところでしょうか。

グレンソンの名モデル3選

 Accrington(アクリントン)

ノーズが長めのセミスクエアトウのラスト103を採用したキャップトウ。スタイリッシュな雰囲気です。ヒドゥンチャネル仕様の、グレンソンの質の高さを感じてもらえるモデルです。

 Oxford(オックスフォード)

セミブローグスタイルの靴です。ラスト77で、伏せ縫いの革底仕様。爪先のメダリオンが小さいので、セミブローグといえどもドレッシーな雰囲気を感じます。

ARCHIE (アーチー)

外羽根ウイングチップのカジュアルシューズです。

グッドイヤーウェルト製法で縫われているものもあれば、スニーカーソールになっているものもあったりと、グレンソンの中で最も多種多様性のあるモデルです。

しかし、どの素材を使っていても、デザインから生まれるイギリス靴の雰囲気は、さすが老舗メーカーというところでしょうか。

これら以外にもおススメのグレンソンもありますし、より詳しく解説しています。以下のリンクも参考にしてみてください。

→GRENSON(グレンソン)  LONDON(ロンドン) セミスクエアトウのストレートチップを楽しむ についてはこちらから

→GRENSON(グレンソン) OXFORD(オックスフォード) 繊細なセミブローグ

→GRENSON(グレンソン) BATH(バース) 渋いフルブローグをお探しですか?

→GRENSON/グレンソン Shoe NO.1  アーカイブコレクション 着こなしまで考える

→GRENSON/グレンソン Shoe No.2 アーカイブコレクション 150周年記念コレクション

→GRENSON/グレンソン Shoe NO.3  アーカイブコレクション 本物のミリタリーブーツ

→ビンテージのグレンソンについて

→激レア!グレンソンのカバ革の靴について

グレンソンの魅力は、なかなか日本ではフューチャーされていませんが、G One以上のドレスシューズであれば、革靴オタクもうなるような作りをしているのは間違いありません。

イギリス靴が好きな方も、本格靴は初めてという方にも、おススメのブランドです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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