ビンテージのGRENSON(グレンソン)の話

6月ということは…

梅雨入りの季節。つまり雨が降る季節だということです。

今まで何度か紹介していますが、ビンテージシューズにとって雨というのは油断隙もならない天敵なのです。

ビンテージシューズに凝りだした時、古いロークのブライトンを買いました。

ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、このブライトンに使われている甲革はバインダーレザーで、いわゆるガラス靴でした。

よって雨の日でもガンガン履けるじゃない!と思って履いたら、ものの見事にソールとウェルトが分離しまして、使い物にならなくなってしまったのです。雨に強いはずの靴が、まさか!というところから壊れてしまったわけです。これはいかに。

その後もいくつか古い靴を手にしてきましたが、やはり雨の日にはなるべく履かないように神経を使っているのです。

スエードだろうとバインダーレザーだろうと、ソールに水が染み込んでしまえば関係がないということです。

さて、そんなビンテージシューズですが、珍しい革を使っていることがビンテージシューズ最大の魅力の一つと言っても過言ではないでしょう。

当サイトでまとめた「旧チャーチ」概要において、エキゾチックレザーの種類をある程度まとめていますが、これ以外にもまだまだ実は革があるのではないかと考えています。

さて、1960年代~1970年代にかけて靴にエキゾチックレザーを使うのは一種のムーブメントだったようで、この時代に作られたイギリス靴はやたらと色んな靴を使っているものが多いです。

ローク、チーニー、クロケット&ジョーンズ、チャーチ、K Shoes(のちにクラークスに買収される)、そしてグレンソンなどがその代表でしょうか。

チャーチは以前に解説したとおりですが、この中でもグレンソンもなかなか珍しい革を使っていたことで有名です。

今回はそんなビンテージグレンソンのエキゾチックレザーコレクションを紹介しましょう。

目次

① アンテロープレザー

レイヨウの革ですね。アンテロープとはレイヨウのことなのです。

レイヨウ=アンテロープは大型の種、小型の種など多くの種類に分かれます。

アンテロープの仲間の共通の特徴は、基本的に、ウシ科共通の特徴を有しています。

生え変わりや枝分かれのない角、草食、小さい二股の蹄、短い尾などがその特徴です。

その中でもアンテロープという種類は主にアフリカ生息しているのも大きな特徴となっています。

アンテロープレザーと一口で説明していますが、分類学的にはウシ科からウシ族とヤギ亜科を除いた残りに相当するものをレイヨウ=アンテロープと呼ぶので、ウシ科の約130種のうち約90種が含まれるのだそうです。

まあ、簡単にどんな動物かというと、見た目が鹿の様なウシです。

見た目はかなり鹿寄りですが、生物学的にはウシなんですね。

ここがポイントです。

アンテロープレザーをアフリカの鹿の革なんて言って、エキゾチックレザーとしてビスポークを受けているところもあるようです。また旧チャーチのBuckのことを鹿革と誤認が続く最大の要因はアンテロープの見た目がウシではなく、鹿っぽいところにあると思っています。

特徴としては、野生の中を生きた革なので、銀面は傷だらけということ。最初から結構ずたずたの傷がついていることも珍しくありません。これは旧チャーチのEntebbe(エンテベ)というアンテロープレザーを使ったものも同様です。

綺麗な表面になっている革はアンテロープレザーの場合ほとんどありません。

神経質な人には全く向かない革ですが、人間だってところどころに引っ搔き傷などがあるものです。野趣にあふれる自然のままの革を楽しむのであれば、本来はこういった革の方がいいのではないでしょうか。

② ケープバックレザー

 

ケープバックレザーもレイヨウの革の一種です。つまりウシです。鹿ではありませんよ~。

これは先ほどのアンテロープレザーよりも、細分化され明確に区別されています。ブッシュバック属に属するクーズーやツタツンガという動物の革だと考えられます。

ちなみにこれがツタツンガですが、どこからどうみても、鹿にしか見えません(笑)

でもこいつらも生物学的にはウシ。

牛です!(笑)

チャーチの場合は、カタログに「Honey Kudu Antelope」との記載があるので、クーズーの革だったようです。

おそらく、グレンソンも同じようなルートから革を調達していたと考えられます。

有名な旧チャーチのBuckには「REAL CAPE BUCK」というレザーが使われていますが、これもこのグレンソンと同じケープバックレザーを使っていたのでしょうね。

③ ガゼルレザー

これは非常に珍しい革です。ガゼルの革です。

ガゼル、つまりカモシカの革ですね。

カモシカの革は、独特な紋様のような模様が出るのが最大の特徴です。

その模様は強いて言うなら…ゾンタやイルチアのいわゆるミュージアムカーフと呼ばれる、独特のムラのある靴に似ているようにも見えなくない…。

いや、やはりガゼルレザーの模様は独特なもので唯一無二の雰囲気を持っています。

個人的にはガゼルレザーを使ったイギリス靴は今までグレンソンでしか見たことがありません。

通好みで、捻りを加えた靴が欲しい方は必見です。

④ ヒポポタマスレザー

こちらは以前、当サイトでも紹介したヒポポタマスの革、つまりカバの革を使ったものです。

→グレンソンのカバ革の靴について詳しくはこちらから

あまりに珍しい革なので、ビンテージシューズ市場においてもまず見かけることは少ない靴です。

今でもカバ革の靴はごく少量ですが、流通しています。

やはりやっているところは、エキゾチックレザーといえばこのブランド、フラテッリ・ジャコメッティです。ただ、そのジャコメッティにおいてもカバ革の靴はほとんど見かけないレアなものです。

ヌバックに仕上げられているのが特徴です。おそらく通常のスムースレザーで使うには、傷がつきすぎていて、見栄えの面で難点があるためにヌバックに加工するのでしょう。

カバは見た目がのんびりしていて、可愛らしくも、間抜けな顔にも見え、人を罵るときにも例えで使われる動物ですが…

その実態は獰猛そのもので、世界では年間500人がカバによる被害で亡くなっているそうです。恐ろしい。

縄張り意識が強い動物で、テリトリーに踏み込んだら時速40キロものスピードで追いかけて噛みついてきます。

この噛みつきパワーはワニの胴体を真っ二つにするほどの力。

カバにマークされたら、ウサイン・ボルトでも逃げ切ることはできません…。

そんな気性の激しさから、皮膚にも傷がつくのかもしれません。

ちなみに、カバは皮膚が濡れていないとすぐに乾燥してひび割れて血がでてしまうそうなので、これもヌバックにする理由なのかも…?

意外と繊細な部分もあったりするんです。

どうでもいい話でした。

珍重な革靴が欲しい時はビンテージグレンソンを探してみてください

このようにザっとあげただけでも、ビンテージのグレンソンには珍しい革がたくさんあることがお分かりいただけたかと思います。

ビンテージシューズ市場で、エキゾチックレザーを使ったもので一番発掘しやすいのは流通の点と知名度の点から見ても旧チャーチをあたるのが一番ですが、中古であっても値が張りやすいというウィークポイントがあります。

それに対し、グレンソンのエキゾチックレザーを使ったモデルは、かなり安く手に入れることが出来ます。

高くても3万円ほどで頭打ちになっていることが多く、ほとんどの場合で3万円あればお釣りがきちんと出る程度で手に入ります。

ただ、これらの靴は革の特性上、分厚くボリューム感がある見た目になることと、昔のラストと相まってファッションアイテムとして履きこなすのには相当難しいことが多いので、その点は頭に入れておきましょう。もう見てお気づきでしょうが、寒気がするほどダサいです。

今どきはまず滅多にお目にかかれないエキゾチックレザーの靴をお探しの方はビンテージのグレンソンの靴を探してみましょう。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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