チーニー CHEANEY  初心者から玄人まで大人気イギリス靴ブランド

今、クラシック回帰が謳われる中で注目を集めているのがイギリス靴ブランド。
イタリア靴やスペイン靴のようなデザイン性が豊かで主張するような色使いをしているわけでないですが、いつの時代でも色褪せない基本に忠実で堅実なオーソドックスなデザインが、この時勢に求められているのでしょう。
また日本製の靴以上に頑健な作り込みによって、10年履いても壊れないところが人気の秘密です。

そんな人気が特に高まっているイギリス靴ブランドですが、現在特に人気で、毎月その靴がどこかのファッション雑誌に目立つように掲載されているのが、クロケット&ジョーンズとチーニーです。

クロケット&ジョーンズの靴はイギリス靴の中でも、最もファッション性に豊かで、デザインもどちらかというとイタリア靴などのスタイリッシュなデザインを意識した木型などを用いることが得意なブランドです。お洒落なイギリス靴、というような感じでしょうか。

一方、チーニーは古典的なイギリス靴を作ることを得意としています。これぞイギリス靴!と言いたくなるような、ゴロンとしたフォルムが今だからこそ新鮮なのかもしれません。
見方によっては「おじさん臭い」雰囲気もありますが、その「おじさん臭さ」は本来どのイギリス靴ブランドにもある「良さ」なのです。
現在は海外資本にも入っておらず、昔と変わらず最もイギリス靴らしいイギリス靴を作っているブランドです。
昔ながらの靴作りを得意としている一方でラスト(木型)の開発や、積極的にコードバンの靴を作ったりと、先進的な姿勢も持ち合わせており、幅の広さがこのブランドの特徴です。

今回はこのチーニーについて紹介します。

目次

チーニーの歴史

JOSEPH CHEANEY/チーニー(以下チーニー)は、靴の聖地として名高い英国ノーサンプトン州の郊外、デスバラーで1886年に設立されました。
1896年に現在の工場に移ってから、今なお靴作りの全ての工程をこの工場で行っています。

1966年にチャーチに買収されたあとは弟的ブランドとして、イギリス靴入門の靴として長く親しまれてきました。
1999年親会社のチャーチがプラダグループに吸収されたため、プラダグループ傘下となりました。
しかし、2009年に、チャーチ創業一族であるジョナサン&ウィリアム・チャーチ氏がブランドを買い戻し現在に至ります。
チャーチはそのままプラダグループで、そしてチーニーはチャーチ一族が現在運営しているという、ちょっと分かりにくい構図になっています。
チャーチ一族が運営に加わることによって、靴の頑健さは増したように感じます。

以前はチャーチグループに属する安価なイギリス靴、という認識が強いブランドでしたが、今や伝統的な英国グッドイヤー・ウェルト・シューズ界に、新しい感覚とトレンドを吹き込むメーカーとして、セレクトショップなどを中心に大きく注目を集めています。

それでは、なぜ今になって、チーニーがここまで注目されているのかその秘密を追っていきましょう。

 チーニーの人気の秘密① イギリス靴らしいイギリス靴

チーニーの人気の秘密のひとつは、イギリス靴らしい、奇をてらわない昔ながらのイギリス靴をそのまま体現している事です。
それは華やかさよりも、現実的で控えめなデザインであり、修理をしながら、長く使えるものを求めるイギリスの国民性・モノへの哲学が詰まった靴ということです。
長年履けるように、修理のしやすいグッドイヤーウェルト製法で出来ており、コバもバンと張り出したフォルム、足指に負担のかかりにくいトウにボリュームを持たせた靴は、どこからみてもイギリス靴といえる佇まいです。
ただし、それだけではこの価値観が多様化した現代では、受け入れられない部分も多く出てきてしまいます。そこでチーニーはラスト(木型)開発に余念がありません。改良を重ね、ただのダサい「おじさん靴」にはならないようにしている研究・開発の取り組みは見逃せません。
事実、チーニーブランド125周年を記念して発表したラスト125はカカトが小さい日本人向けに、ヒールカップがこぶりになっており、履き心地の上でも秀逸なラストとなっています。

チーニーの人気の秘密② 別注に応える柔軟性

チーニーは現在海外資本に入っていない、希少なイギリス靴靴ブランドとなっています。
それゆえに様々なセレクトショップからの別注依頼にも柔軟に応えることができています。
やはりセレクトショップ目線から作られた靴は独特な感じがあり、見ていて面白いものが多い印象です。

かつては兄弟ブランドであったチャーチが、このチーニーの役割を果たしており、横浜の有名なショップ「信濃屋」や「BEAMS」、「三越」などのネームが入った別注品が多くありました。
しかし1999年にチャーチがプラダに買収されると、別注品はプラダグループの意向で受け付けなくなってきており、現在チャーチの別注品はほとんど見かけなくなっています。

対して2009年にチャーチ一族によって、再び独立したチーニーは、かつてチャーチが行っていたように、自社ブランドネームをつけての別注品を手掛けるようになりました。

この柔軟性が各企業に重宝され、現在チーニーというブランドがスポットライトを浴びている理由となっています。

チーニー人気の秘密③ 質と値段のバランスが取れている

チーニーは高価格ブランドが多い中、現実的な値段で出ています。
税込5以下で購入できるイギリス靴は現在稀少です。

今、地球環境の変動、原料費の高騰、人件費の問題、為替の問題などによって、かつての値段設定よりも、だいぶ値上げがされたイギリス靴。
昔からチーニーの靴を知っている人は「値段が…」と感じるかもしれませんが、革靴の高騰は世界中どのブランドも起きていることなので、イギリス靴、そしてとりわけチーニーだけが値上がりしているわけではありません。
日本国内の環境で言えば、消費税が8%へと引き上げされたのも、値上げ感を強めている要因のひとつでしょう。

質に関しては、昔の「安いイギリス靴」というイメージを払拭しようと、輸入元の渡辺産業(イギリスブランドのセレクトショップ ブリティッシュメイドの運営会社)が力を入れてPRをしています。その力の入れ具合に効果もあったのか、現在チーニーの品質は、値段に対して高い水準のクオリティを一定に保ったものになっています。

これらの理由はチーニー人気の秘密の一部です。
そしてこの人気を支える要素がラスト(木型)にあります。

3つの名ラスト

歴史の深いチーニーなので、多くのラストと名モデルがありますが、その中から私が悩んだ末に選んだラストが以下の3つです。

ラスト125

2011年に創業125周年を迎えたチーニーが開発したラストです。 日本人を含めた現代人の足を考え抜いて作られたこのラストは、以前よりも細見のフィットを採用し、ヒール部分を小ぶりにすることで現代人の足によりフィットする構造になっています。 スマートな表情を取り入れつつも、スクエアでもなくラウンドでもないサスピシャススクエアトウ(サスピシャスとは曖昧な、という意味)が伝統的なクラシック感を演出します。
トウとノーズのバランスはチャーチの173ラストに非常に似ていますが、カカト周りをはじめとしたフィッティングはかなり攻め込んでいて、ピタッと足に吸い付くようなラストになっているのが特徴です。

ラスト1886

現在のファクトリーが100周年を迎えた1996年に、記念して開発されたラストです。
長すぎず、捨て寸が短いショートノーズと、英国の伝統的な丸みのあるラウンドトウ。 ややゆとりがあるボールジョイントは、幅広な日本人の足に馴染みやすいラストです。 また、土踏まずを絞る事で足を支えるフッティングになっているのが特徴で、やや小さめのヒールカップも日本人の踵にフィットしやすい形です。

ラスト4436

英国軍に供給していたこともあり、本国ではミリタリーラストとも呼ばれているラストです。チーニーの現行品番で最も古いラストで、丸くて無骨なフォルムはイギリス靴そのものです。
このラストで作られる靴は全てヴェルトショーン仕様となるなど非常に手の込んだつくりになるのが特徴です。

チーニーの名作3選!

チーニーでは魅力があふれる素晴らしい靴がたくさんありますが、今回はチーニーの概要の紹介記事ということで、3つに絞って紹介します。

ALFRED(アルフレッド)

125ラストを使用した内羽根のストレートチップです。

まずは基本からというところでしょうか。このラスト125ですが、日本人の小さいカカト周りに非常にフィットするラストです。
カカト周りが大きく、深さも浅いために、足が抜けやすい一般的なイギリス靴とは違い、そのフィッティングはチーニー乾坤一擲のラストです。
このラストから生まれる内羽根のストレートチップはブリッティッシュクラシックかつエレガント。
使われている革は、有名タンナー、ワインハイマー社製の、上質で肌理の細かいカーフで、経年変化も綺麗に出ていきます。

WILFRED(ウィルフレッド)

アルフレッドと同じく、125ラストを使用した内羽根のセミブローグです。
チャーチの173ラストと同じように、クラシックなサスピシャススクエアトウになっており、チャーチの名作「ディプロマット」に近しい雰囲気を持っています。
以前、セミブローグの名作はエドワード・グリーンのカドガンとチャーチのディプロマットくらいしか思いつかないと言いましたが、セミブローグの名作に名を刻むのにふさわしい佇まいは本物です。
ダイナイトソール仕様であれば、急な雨でも心配ありません。

CAIRNGORM (ケンゴン)

チーニーのカジュアルラインであるカントリーコレクションに属するケンゴン。
最も古いラスト4436を使用した外羽根キャップトウモデル。無骨でショートノーズ、野性味あふれるグレインレザーを使ったこのモデルは、イギリスカントリーを体現しています。カントリーブーツでなく、短靴なのにこの雰囲気。今の時代では珍しいこれ以上ないコテコテのイギリス靴です。
泥捌けが良く、カントリーな雰囲気を倍加させるグレインレザー、頑強なグッドイヤーウェルト製法、厚みのあるダブルソールとヴェルトショーン仕様、そして悪路をものともしないコマンドソールといった様々なこだわりは、またとないイギリス靴の雰囲気を楽しめる靴に仕上がっています。

最後に

今回はラストも3選、名モデルも3選と、かなり絞り込んで書きました(あくまで個人的好みに偏っています)。

今回はチーニーというブランドの紹介記事だったので…。

そしてチーニーの魅力は、この紹介記事だけでは書き尽くせません!
今回紹介したモデルも含めて、これからひとつひとつ魅力にあふれたチーニーの靴を紹介していきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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