いつの時代の価値感が変わらない、普遍的な靴は男のドレススタイルを格上げします。
その中でも、重厚感を与えつつ、くどすぎない雰囲気にまとめあげる靴のスタイルは、セミブローグをおいて他はないでしょう。
いわゆるフルブローグというタイプは…
このように鳥の羽のようにパーフォレーションの形をとるため、ウイングチップともいわれます。この靴の起源はカントリーシューズにあるため、かなり粗野で重厚感があふれます。
※これはチャーチ御三家モデルの1つ、Chetwynd(チェットウィンド)です。
しかし、ソリッドでシャープな印象を与えたいときには、このようなスタイルの靴では、ちょっと重すぎたり、華美でうるさく感じる時があるのは事実です。
フルブローグまではいかなくとも、ずっしりとした印象は残したい、そんな場面もあるでしょう。
そんな時はセミブローグの靴がおすすめです。
ウイングの形状にならないストレートのパーフォレーションが施されたキャップによって、重厚感と全体の緊張感を引き締めています。
そして、この写真のセミブローグこそ、チャーチ御三家モデルの1つである、内羽根セミブローグの傑作、Diplomat(ディプロマット)です。
今回はこのディプロマットを紹介していきます。
目次
Diplomat(ディプロマット)の概要
このディプロマットはチャーチのカタログをみると、1945年に誕生したモデルだそうです。
「Diplomat」というモデルネームは、文字通りの当時の外交官がこのようなセミブローグの靴をよく履いているのが散見されたことに由来しています。
以前はラスト73、ラスト100に採用されてきましたが、現在はラスト173がディプロマットには使われています。
ラスト173は2003年に登場しました。
前身となっている1940年に誕生した伝説的ラスト73とプラダグループに入ってから誕生したラスト100を掛け合わせて誕生した、現在のチャーチの顔のラストです。
ラスト73がチャーチの創業年である1873年からつけられたといわれています。
ラスト73は良くも悪くも昔ながらのイギリス靴のラストだったので、捨て寸が短く、中で足が詰まってしまうことがありました。
そのためラスト73は足の形状が変化した現代人の足に合いにくいのが難点でありました。ラスト73のセミスクエアトウの形状はそのままに、ラスト100の程よいノーズの長さを取り入れて、現代人向けに履き心地を改善しています。
旧チャーチのラスト73では、捨て寸が短くおじさん臭い、おじさん臭すぎる雰囲気になってしまうこともあるのですが、ラスト173のバランスはそのおじさん臭い部分の良さを残しつつ、野暮ったさがなくなるようにバランス良く作られています。
昔と比べロングノーズになったと書く雑誌媒体があるので、長い靴のように感じるかもしれませんが、ラスト73が今日的に考えると短かいだけで、ラスト173はむしろ世間一般的にはクラシックで寸は短く見えるラストです。
Diplomat(ディプロマット)は007 ジェームズ・ボンドも履いている
以前チェットウィンドを紹介したときにもお伝えしていますが、チェットウィンド同様、ディプロマットも007ことジェームズ・ボンドが履いています。
作品は1995年の作品「Goldeneye」にて、5代目ジェームズ・ボンドのピアース・ブロスナンが履いています。これまたチェットウィンドと同じ映画です。
どのシーンで使っていたかというと、戦車でチェイスを行うシーン、そして軍用列車で監禁されたところを、秘密兵器のオメガのシーマスターから出るレーザー光線で鉄板を焼き切り脱出するシーンで確認することができます。
ピアース・ブロスナンがディプロマットに合わせて纏っているスーツはイタリアの高級スーツブランドのブリオーニのスーツです。
ただし、このネイビーバーズアイのスーツ地はイギリスはハダースフィールドの中でも、混紡素材を得意としているミル、Schofield & Smith(スコフィールド・スミス)で織られた生地なのです。ですから、ディプロマットのようなイギリス靴も違和感なく溶け込んでいます。
もちろん、ジェームズ・ボンドなので、どことなくイギリスの雰囲気をスタイルの中に忍ばせたのでしょうが…。
セミブローグの靴はワードローブに加えるべき靴だと思います
セミブローグの靴を履いている人は、そんなに多くないかもしれません。
特に靴に対しての知識がない一般のサラリーマンの方には、その見た目の派手さから敬遠されがちかもしれません。
しかし、これも内羽根フルブローグの靴と同じく、セミブローグの靴は履くと思いのほか派手さはありません。
歴史に裏打ちされた重厚感とまじめさが共存する、相手に安心感を与える靴です。
セミブローグは男性のファッションスタイルの格を引き上げるエッセンスを秘めた素晴らしいスタイルの靴です。
黒であれば、ずっしりとスーツスタイルに、エボニーカラーなどの茶系であれば、ジャケパンスタイルにも品と軽くなりすぎない華やかさを約束してくれます。
ジェームズ・ボンドではありませんが、まさに男を上げてくれる秘密兵器なのです。
セミブローグの靴を今まで検討したことない方、これからぜひ挑戦してみたい、という方であれば、なおさら、まずはこのディプロマットから入ることをおススメします。
履いた時に自信が体から湧き上がってくるかも!?
最後まで読んでいただきありがとうございます。