ダービー。
アメリカ式の呼び名ではブルーチャー(Blucher)やブラッチャーともいいます。
外羽根の靴のことです。
その外羽根の靴の中でも、プレーントウは一番の基本形です。
この外羽根のプレーントウがここのところ本当に使えるな、とその汎用性の高さに改めて驚かされています。
あ、いきなり話が脱線しますが、プレーン「トウ」としているのは、その発音が正しいからです。
今までの記事でも、私は一度も「トゥ」とか「トゥー」とは書いていません。
雑誌などを見たときに、プレーン「トゥ」となっているのは、違和感を覚えます。
ネイティブの発音に準拠するのが絶対とは全く思っていませんが、トゥー、トゥー言っているのは、日本人だけでしょう。
https://ejje.weblio.jp/content/toe
お時間のある方は発音を聞いてみて下さいな。
トゥートゥー言うのは、「キスしてほしい」を歌うだけでいいのです。
プロレスだってToe kickはトーキックですし、ファンクスもスピニング・「トー」ホールドですからね。
うん、「トー」という方がまだ発音に近いでしょう。
さて、外羽根のプレーントウは靴の基本形ですから、誰しもが一度は履いたことがあるのではないかと思います。
木型の良し悪しで作品の出来栄えがほとんど極まるホールカットの靴と違い、羽根の位置、切り返し方、アイレットの数、ノーズの長さ、もちろんラスト(木型)の良し悪しで見た目の全く変わってしまいます。
実は自分でこだわろうと思うと、琴線に触れる靴をピッタリ見つけるのは、実は無茶苦茶難しいことだと思っています。
まず第一の理由として、靴を作る上で比較的簡単な工程で靴を作ることができるので、手抜きをしようと思えばいくらでも手抜が出来てしまうのが、この外羽根のプレーントウです。
つまり安い靴においても、多く見かける靴なのです。
対してパーフォレーションやらメダリオンやらを入れなければならないブローグシューズは、プレーントウに比べて非常に煩雑な作業工程が必要なので、それなりの値段のものが見受けられるようになります。
多くの方がここまで読んで、なんでこいつは外羽根のプレーントウに着目するんだ?
と思っていることでしょうが、おそらくそれは「安い靴でも取り入れられている簡素な靴」というイメージが刷り込まれているからなのではないかと私は推測しています。
外羽根のプレーントウ=あんまりカッコ良くない、それはなぜかといえば、服装に頓着の無い人たちが無造作に履いているイメージが、知らず知らずのうちに潜在意識に入っているのではないかということです。
では、そのイメージ通りなのか?これは否です。
カッコいい外羽根プレーントウの靴を探すのは、非常に困難ですが、見つければ即戦力になるほど頼もしい靴なのです。
今回は外羽根プレーントウの使いやすさをもう一度考え見つめ直してみたいと思います。
目次
ドレスシーンの外羽根プレーントウ
ドレスシーンにおいて、外羽根のプレーントウを履いている人も多いでしょうが、いったいどこまでこだわっているかは疑問です。
5アイレットか4アイレットでゴロゴロとしたプレーントウをスーツに合わせるだけで、そのスーツスタイルが台無しになると思っています。(アイビーなど一部例外はありますが、個人的には好きません)
また、羽根の位置が悪すぎて、無駄にノーズが長く見えるという事もあります。ひと昔前のホストが履いていたようなとんがり靴のように見えることもあるのです。
キーワードは「Vフロント」 「アイレットの数」
選ぶのが難しい外羽根プレーントウの靴ですが、いくつかのポイントを抑えると、ドレスシーンに履いてバチバチに決まるプレーントウを見つけやすくなります。
まず1つ目のポイントは「Vフロント」であること。
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Vフロントとは、土踏まずから伸びた羽根の切り返しがVの字状になっているもののことをいいます。
この切り返し方ひとつで、シャープで若々しいイメージが与えられます。
文字通りのV字を描くものになればなるほどシャープになります。
完全なV字にならず、羽根の切り返しがスクエアになっているものもあります。
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これはロークの靴ですが、少し柔和な雰囲気がでます。
その他にも切り返しに丸みがあるものもあります。
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このクロケット&ジョーンズのハイバリーも素敵ですよね。007モデルです。
羽根の切り返しひとつも実に奥深い世界なんです。
そしてVフロントの靴といえば、多くが3アイレット。
そう2つ目のポイントは「アイレットの数」です。
Vフロントの靴といえば、3アイレットが基本。次いで2アイレットや4アイレットが見られます。
3アイレットのプレーントウダービーはイギリスの靴に良く見受けられる仕様です。そういった背景もあるのか、非常に精悍に見えます。アイレットの数が少ないと、スッキリした印象になります。
2アイレットだと、よりエッジの効いたシャープな雰囲気になり、イギリス的な香りだけでなく、コンチネンタル的な趣も増します。
4アイレットは妙に間延びするので、個人的にはおすすめではありません。
フレンチな雰囲気のスクエアフロント
イギリス的な精悍な雰囲気よりも、もっともっとコンチネンタル的に洒落た雰囲気を出すのであれば、スクエアフロントのダービーシューズがお勧めです。
このスクエアフロントの代表作は何といっても、コルテのARCA(アルカ)でしょう。
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モードっぽいんだけど、モードでもない非常に洒落た独自の立ち位置を完全に築き上げています。
ドーメルやスキャバルのようなパリッとしているんだけど、艶のある服地のスーツにめちゃくちゃマッチします。
昔ながらのゴリゴリした着心地のイギリス服地にはイメージは合わない。
タンが長く形成され、そこに絶妙なバランスでスクエアフロントの羽根が置かれます。
スクエアフロントのダービーシューズは、イギリス靴ではあまりみかけなくなり、コルテのようなフランス靴やイタリア靴といったコンチネンタル系の靴ブランドで見かけられるようになります。
余談ですが、同時に1アイレットの靴なども見受けられるのが、フランスやイタリア靴の特徴です。1アイレットになるとほぼ飾りのようなものになりますので、見た目重視の靴が多いフランス靴やイタリア靴が1アイレットを採用するのも頷けます。
ドレスよりの外羽根プレーントウの汎用性の高さ
ドレス向けの外羽根プレーントウの靴の汎用性の高さはすごいものがあります。
グレンチェック、チョークストライプ、ピンストライプ、ペンシルストライプ、無地、どんな柄のスーツでも全く関係なく足元で受け止めてくれます。
Vフロントになれば、若々しくシャープな印象になります。40代~50代以降の管理職の方が履けば、シャープなだけでなく、誠実な印象もついてきますので、まさに年代問わずの最強シューズです。
個人的に、ノーブルに仕上げるのであれば、ネクタイを無地にして頂くといいかと思います。
外羽根のVフロントプレーントウであれば、結婚式やお葬式といった冠婚葬祭全般にも使えます。当然失礼にはあたりませんので、ガシガシ履いて頂ければと思います。
近頃は若い世代の結婚式になればなるほどドレスコードが壊滅状態にありますので、ストレートチップでいくと、自分だけバチバチにかしこまった雰囲気になってしまうこともあります。自分も何度かそういった場面に遭遇しています。
そんな時柔らかさ、シャープさ、若々しさなどを程よいバランスで加えてくれる外羽根プレーントウの使い勝手の良さは、ある意味でストレートチップ以上にあると感じています。
ドレスコードを逸脱しない中で、周りと調和のとれる靴はこの外羽根プレーントウ以外にないと思います。
カジュアルシーンのプレーントウ
カジュアルシーンに履くプレーントウは、やはりラストが丸っこく、ぼってりしたものがいいでしょう。
ボリューム感のあるものになればなるほど、カジュアル感が増していきます。
代表例はオールデンのプレーントウでしょう。
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アメリカの靴なので、ダービーというより、ブルーチャーになります。実際オールデンの公式サイトではBlucherとジャンル分けされています。
このオールデンのプレーントウはかなりカジュアルになります。正直バチっとスーツに合わせるのは難しい面もあるのです。
やはりブレザースタイルなどのジャケパン以下のスタイルにマッチするかと思います。
イギリスの靴でもいくつかそういった靴はあります。
私も愛してやまないチャーチのShannon(シャノン)はイギリス靴ながら毛並みは完全にアメリカ寄りです。なんといってもそのボリューム感ときたら、オールデン以上にあるのです。
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私も昔はシャノンをスーツに合わせていましたが、やはりカジュアルな傾向があるので、梅雨時のジャケパンスタイルにもっぱらあわせています。
それとバラクータG9のようなラフなスイングトップを着る時に大活躍!
キーワードは「ボリューム感」 「4アイレット、5アイレット」
カジュアルに合わせるのであれば、キーワードは「ボリューム感」です。丸ければ丸いほどその印象はカジュアルになります。
また、3アイレットなどよりかは4アイレットや5アイレットといった「軽快感」がないもののほうが、カジュアルには向いていますね。
まとめ
いかがでしょうか。外羽根のプレーントウひとつとってもこれだけ奥が深いんですね~。
私も若いころに履いて、なんだかおっさん臭い、と思って敬遠していた外羽根プレーントウなのですが、あらためて向き合ってみると、とんでもなく奥が深い世界が広がっていたのです。
思えば、ビスポークシューズでもよくオーダーされているのが、外羽根プレーントウの靴です。
私に靴のノウハウを教えてくれた靴愛好家の師匠は「プレーントウの靴をみれば、そのメーカーの力量がわかる」と言っていましたが、本当にその通りなのだと感じます。
皆さんも改めて外羽根プレーントウの魅力につかってみませんか?
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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