いよいよ5月も中盤にさしかかり、あっという間に6月になります。
近頃は雨の日もチラホラと出てきています。梅雨の準備をしないといけません。
靴好き泣かせのシーズンが梅雨です。
どんな靴を履いていこうか大変悩ましい物ですよね。
スーツに合わせるときは、私はバインダーレザーのチャーチを履いています。
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チャーチのバインダーカーフの魅力は何度も当サイトでお伝え済みですが、本当に良い革です。
スーツに合わせる雨靴であれば、これに勝る革はありません。光沢感もあって、水は当然弾きますし、安っぽくも全くない。スエードよりもドレッシーで場の雰囲気を壊すこともない。
こんな便利な革はないですよ。あ、こんなことを言っていたらこのコンサルのポリッシュドバインダーカーフ版もほしくなってきた…。
しかし、場合によってはスエードの靴も履きます。
スーツにスエードは滅多に履きませんが、ジャケパンになれば話は別。ガンガン履きます。
色んな起毛革の靴を履きましたが、一番雨に強いのはバックスキン(鹿革)だと感じています。
今回はこのバックスキンと、鹿革の魅力をお伝えします。
目次
バックスキンとは?
今でこそバックスキン=スエード(革の裏側をサンドペーパーなどで擦って起毛させたもの)という認知が広まっていますが、バックスキンとは本来、スエード革全般のことを指すものではありません。
バックスキンとは本来、「Buck Skin」と書きます。
この「Buck」とは雄鹿のことを指し、本来のバックスキンはこの雄鹿の銀面(表側)を逆立てたもののみを言います。
なぜ起毛させるかというと、そのままだと野生の鹿は皮に生傷が多く、製品化するときに革目に傷が目立ち美しくないためにスエード状に逆立てるのです。
バックスキン=スエードという今一般に広まっている認識は、スエードが裏革(Back Skin)であることから混同され広まったのです。
なお、起毛素材には同じく「ヌバック」がありますが、これは鹿革が貴重であるため、代用として牛の表皮を起毛させたことにより「New Buck」が生まれました。この「新たなバックスキン」の意味である「New Buck」が転じて訛り、ヌバックとなったのです。
このように、バックスキンは本来であれば、雄鹿の銀面を逆立てたものが正式なのです。
Church’sの「DEER SKIN」
今回紹介するのは古~いチャーチの「DEER SKIN」という革で作られたモデル。
一般的にディアスキンというと、牝鹿の革のことを指すとされますが、現在実際に市場で出回っている鹿革の靴をみると、厳密に牡鹿なのか牝鹿なのか区別をして、明確に打ち出しているものは見たことがほとんどありません。
なお、ディアスキンと言っているのにも関わらず、昔のチャーチのカタログをみると、旧チャーチの「DEER SKIN」という起毛革は「Brazilian Buck Skin」というものを使っているとのことで、その正体はブラジルのバックスキンのようです。
ディアスキンとバックスキンの定義と実情がこんがらがって、ややこしいですが、そういうわけで一応今回紹介するこれも本物のバックスキンということにしておきたいと思います。
旧チャーチの革でたびたび話題にあがる「Real Cape Buck」と比べるとさらにモコモコとした表情。
しかし触ってみると意外と表面は滑らかでも、サラッともしておらず、なにやらザラッとしています。
ブラッシングをしてみると、はいわゆるスエードのように、順目に沿った毛並みと逆目に沿った毛並みの違いがあまり出ません。
よって見る箇所によって色の濃淡が違うという現象は殆ど出ません。
鹿革の靴のメリットは以下の3点に集約されます。
鹿革の特徴
①.丈夫で、柔らかく、滑らかな肌触り
鹿革は非常に丈夫な素材でいながら、キメが細かいのでしっとりとした肌触りがあるのが特徴です。さらには革そのものが柔らかいため、履き馴染みにも時間を要しません。
②.水に強くて通気性に優れている
吸水性や保湿力が高いので水にも強く、濡れても変形しにくい特徴があります。通気性もいいので、蒸れにくいという特性もあります。
③.古来より日本では鹿革を用いてきました
現在は牛革に比べると馴染みがありませんが、非常に優れている特性から日本では古くから鹿革が用いられてきました。
鹿革は適度な伸縮性を持っているので、数年間 お手入れをしなくてもしなやかさを失いません。革そのものが老化しにくいのも柔軟性を保つ理由です。
事実、東大寺正倉院には鹿革製のものが保存されていますが、千年以上たった今でも柔軟性と色彩の両方が保たれています。これが他の革にはない鹿革が持つ優れた点です。
柔らかい、雨に強い、退色しないの3拍子
さて、このバックスキンのスエード、履いてみるとどんな感じなのでしょうか。
まず、圧倒的に柔らかいです。
現行のスエードにはない肌触り、伸びが感じられます。履いていて足の指があたるとか、そういったストレスは一切感じません。
そして雨に強いです。かなり水を弾きますし、大きい水滴のものが落ちて、いったん黒ずんでもそこがシミになるということもありません。もうその時点で便利です。
さらに、革に油分があるためか、なかなか退色しません。
このようなアタリによって色が薄くなった部分も、起毛革専用の栄養スプレーをかければ…
あっという間に色が戻ってきます。
この靴はおおよそ60年代後半以降に作られたものだと推測されるのですが、50年近く経ってもなお美しい毛並みと色を保っているのが素晴らしいです。
バックスキンの革の丈夫さは折り紙付きです。
こんな靴を現行品で手に入れたいところですが、なかなかやってないんですよね。
どこかのシューズブランドが復刻してくれることを今日も祈っています…。
最後まで読んでいただきありがとうございます。