YANKO(ヤンコ) スペイン靴人気ブランド、ヤンコのラスト、素材を解説!

ここ最近は各スタイルの名作シリーズを記事としてお届けしていましたが、その名作を紹介する上で、まだきちんとこのサイトで紹介しきれていなかったブランドがあります。

それがスペインの靴ブランドです。

その中でも最も多く名作として選出しました、YANKO(ヤンコ)を今回は紹介したいと思います。

目次

YANKO(ヤンコ)の概要・歴史

YANKO1961年にホセ・アルバラデホ氏によってスペインのマヨルカ島に創業されたブランドです。

マヨルカ島はスペイン革靴ブランドの多くが、そこに集結し、靴の製造が行われています。

ヤンコの起源をたどると、とても古い源流へとたどり着きます。1890年、スペインのマヨルカ島でアルバラデホ家が同族企業として靴の製造を開始したのが、最初で、20世紀中頃まで「Sanson’s」というブランドを運営していたそうです。

そのように考えるとおおよそ130年近くに渡り、アルバラデホ一家は靴の製造を続けていたという事がお分かりいただけるかと思います。

ヤンコは当初よりイギリス靴的な靴作りを心掛けており、半世紀以上に渡ってグットイヤーウェルト製法で靴を作り続けてきました。底材から木型までを自社生産しています。

スペインという国は、イギリスとイタリアの間に挟まれたところに位置しますので、スペインの靴ブランドは作りはイギリス的なグッドイヤーウェルト製法ながら、イタリアのような色鮮やかな手染めの手法が加わったり、シャープなシルエットで、ラテンの気質が感じられる靴を作るところが多いですが、ヤンコはほぼ全てイギリス靴風味の靴になっているといえます。

甲革には主にアノネイなどの革が採用されており、やや革が硬い印象です。グッドイヤーウェルト製法を取り入れているので、ソールの交換ができても、甲革がヘタレてしまってはいけないと、丈夫な革を使っているといった印象です。

履き馴染ませるのに少々時間がかかりますが(グッドイヤーウェルト製法の靴は大なり小なりその過程が必要です)、その分履き馴染んだ後のフィット感も良く、型崩れもしないため 、長年履けるのが魅力です。

レザーソールは本格的に伏せ縫い仕様(ヒドゥンチャネル)になっており、高級感もあります。ヤンコのレザーソールは柔軟剤などを使っていない為、返りがついてくるまでに時間はかかるものの、堅牢度が高く、履いていて型崩れもしないため、長く使えることが嬉しいポイントです。

もちろん返りも履き馴染んでいくうちについてきます。

ヤンコの最大の特徴はラバーソールにあり!

 ヨーク、アトランタというラバーソールがヤンコの代名詞的ラバーソールになります。

素材からこだわっており、クルマのタイヤにも使われる耐久性・安全性の高いカウチョと呼ばれる天然のゴムを使用しています。特徴としてこのラバーは溶解温度が高いため、真夏の高温にさらされたアスファルトでも素材が柔らかくなり、減りが早くなることはありません。

クレープソールなんかは同じラバーソールでも、太陽光で熱されたアスファルトの熱が加わると溶けてしまい、べたつきがでてしまうものですが、このヤンコのラバーソールにはそういった心配はありません。

加工においては現在多く使用されている溶解温度の低いサーモ・プラスティックのようにラバーが溶けた状態で革に流し込んで貼り合わせることが出来ないため(革が焼けてしまう)、ヨークやアトランタのような革とのコンビネーションは手作業で革とラバーを貼り合わせ、さらに縫い合わせるといった手間を必要とします。

ヨークソール

ヨークソールはダイナイトソールよりも細かく小さなスタッドがついているのが特徴です。

(ヤンコ) YANKO ストレートチップ ブラック (14168 BLACK) 9 1/2(28) より

蓮を見て、ゾワゾワしてしまう集合体恐怖症の人は、このブツブツしたソールを見るとゾワッとするかもしれませんね(笑)

先に解説しているとおり、耐久性とグリップ力に富んでおり、全天候型のソールとして、デイリーユースで活躍します。

アトランタソール

アトランタソールはビブラムのタンクソールのような、ゴツゴツとしたラバーを使っています。

(ヤンコ) YANKO Uチップ ライトブラウン (14539 LIGHT BROWN) 7 1/2(26.0)より

この手のラバーソールはアウトドア用としてよく用いられ、カントリーやワークブーツなどで採用されているのを見かけます。

実際、ヤンコでアトランタソールを使っているモデルはブーツだったり、Uチップであったりとワークシューズに仕様として採用されていることがほとんどです。

ヤンコのヨークソールとアトランタソールは、予め二段階の厚みを有して作られたラバーソールと、土踏まず部分にラバーソールと同じ高さになるように、レザーソールを組み込んでいるのが特徴です。

厚みを均一化させることで、見た目の違和感を取り除くことに成功しています。

また、ソール全体をラバーにしないのは、土踏まずの部分をレザーにすることによって通気性の良さを保つことを目的として行われています。

フルラバーの靴は防水性が良い面、靴内部に水が侵入してくると、通気性の悪さに四苦八苦するという一応デメリットもありますが、その点をこのラバー・レザーの複合ソールによって、通気性の問題点もクリアしています。

ヤンコのラスト(木型)は種類がたくさん!

スペイン靴屈指の人気ブランドであるヤンコはラストの種類も豊富です。

これから紹介するラストは数あるヤンコのラストの中の一部です。

特に人気が高く、これがヤンコの靴だよね!

と認識されるのはラスト777、ラスト915、ラスト961でしょうか。

これらに共通するのは、なだらかなチゼルトウ。チゼルとは工具のノミのことで、文字通りノミのようにつま先が斜めに角度がついているのが特徴です。

この独特なフォルムをもつチゼルトウはいつ見てもヤンコらしさを感じさせるのです。私はギネスのモチーフとなっているトゥーカンのくちばしによく似ていると感じます(笑)

それでは、いくつかラストを紹介していきます!

ラスト777

ノーズがイギリス靴に比べやや長く、スクエアチゼルトウのスタイリッシュなフォルムと、土踏まずの部分の絞り込みとフィドルが盛り上げによって、フィット感の良さが売りなのが、ラスト777の靴です。

ラスト790

ヤンコのラストの中ではややノーズが短めで、イギリス靴を思わせるセミスクエアトウを持っているのが、ラスト790です。

クロケット&ジョーンズの名チャッカブーツである「Chukka(チャッカ」に使われているラスト200に雰囲気が良く似ています。

ラスト915 

NEWラスト915

ラスト915をベースに、内振り設定にする事でフィット感を高め、ノーズを長くし、シャープさを追求したのが新しいラスト915です。

履き心地はこちらのほうが、気持ち横幅などが狭くなり、フィット感がありますが、ノーズが長くなった分、つま先の捨て寸に余裕がでます。

ラスト915と新しいラスト915でサイズを変えるという事は私の場合ありません。

ラスト955

イギリス靴やアメリカ靴に通じるようなオーセンティックなラウンドトウと、シェイプさせた深いヒールカップでフィット感が高いのがラスト955です。

このタッセルローファーとはラウンドトウとくびれた見た目、実際のフィット感も良く、カカトが逃げにくいため好相性です。

ラスト960

トウにボリュームを持たせ、足のラインに沿ったヒールカーブでフィット感を高めた、カカト周りのフィッティングが気持ちの良い、最新ラスト「960」を使用しています。ラスト955と比べるとこちらのほうが、気持ちほっそり、面長のラウンドトウとなっています。

ラスト961

ラスト961はラスト777をベースに、横幅・甲にゆとりを持たせ、当スプリングを強めに設定し、内ぶりにしたのが新型のラストです。見た目のスマートさと、幅広甲高の方にも安心して履けるようになっています。

ラスト962

スリッポン用のラスト962はイギリス風味のスリッポンを作る元となります。

このラストを使ったタッセルローファーはクロケット&ジョーンズのキャベンディッシュにそっくり!

キャベンディッシュでカカト周りが緩かったという方はぜひこちらを履いてみて下さい。こちらのほうが、靴のウエスト部分から、ヒールに向けて角度を付け、カカトがヒールカップに引っかかるように(脱げにくくなるように)、なっています。ヒールカップは深さもあるため、足も逃げないので履いていて楽です。

ヤンコの弱点

ヤンコの弱点を唯一あげるとすれば…シャンクが合成樹脂を使っていることで、これが接着剤と相性が悪く、靴内部で剥がれ、音鳴りの原因になることくらいでしょうか。

これも音鳴りしてしまうものと、しないものとで、製品差があるので、一概にはいえない弱点?となります。

このシャンクが原因の場合、オールソールさえしてしまえば、解決されるので問題はほとんどありません。

また、ヒールの積み上げはナンポウというレザーと紙の合成素材だったりしますが、オールデンなんかにも使われていることがあるので、(むしろオールデンは価格的にきちんとレザーの積み上げを使うべきだといつも思ってます)デメリットと呼ぶようなデメリットでもありません。

ヤンコ最大のアドバンテージはグッドプライス、グッドパフォーマンス

ヤンコの最大のアドバンテージは、レザーソールの伏せ縫い、ヨークソールのラバーの貼り付けなど手作業を加え、手間暇がしっかりかけられ、さらに高級感あふれるマテリアルを使っていながら、価格がイギリス靴などに比べると、ぐっと抑えた価格に設定されているという点です。

もちろん履き心地も申し分ありません。

高級靴としての美しさもきちんと兼ね備えています。強いて弱点を述べましたが、この価格で、手間暇がかかった素晴らしい革を使った靴が手に入るのですから、文句をつけるのが無粋というもの。

たとえばクロケット&ジョーンズのキャベンディッシュが予算的に買えない、となったときに、ヤンコのラスト962のタッセルローファーを買ったとしても、決して妥協ではないと私は思います。間違いのないクオリティがヤンコの靴にはあるからです。

まさにグッドプライス、グッドパフォーマンスの靴といえるでしょう。

初めて本格的なインポートのグッドイヤーウェルトシューズを履いてみたいという人にうってつけのブランドです!

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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コメント

  1. ゆう より:

    毎日楽しく拝見しています。カルミナの靴についても知りたいのですが、機会があればよろしくお願います。

    • バーリーコーン より:

      ゆう様
      コメントありがとうございます。
      カルミナの靴もいずれ取り上げます。楽しみにお待ちください。