先日ビナセーコー社が展開する国産靴ブランド、PERFETTO(ペルフェット)をご紹介しました。
価格帯はおおよそ4万円台~5万円台と本格靴ブランドとしては中価格帯となっている中で、クオリティはインポートシューズブランドに比肩する作りとなっているのが消費者に嬉しいところです。
価格を見て、「価格なりだろ~?」と思ってしまうのは非常に勿体ない。頭でっかちですよ…!
実際国外で展開している海外版ペルフェットともいうべき「KANPEKINA(完璧な)」では、モデルによっては日本円にして80,000円近くする価格設定で展開しているそうです。
フランスの老舗百貨店『Printemps』でも取り扱われており、フランスのメンズファッション雑誌『MONSIEUR』にも掲載されたこともあります。
日本でインポートシューズを購入するのと同じように、欧米の人にもMade in Japanの靴が受け入れられているようです。
もちろん皮革製品文化ことに革靴において歴史に一日の長があるヨーロッパにおいて革靴が受け入れられるのは並大抵なことではありません。
いったいどこにペルフェットの素晴らしさがあるのでしょうか。
色々な要素はありますが、パッと見たときにすぐにわかる技術力を有しているところもあります。
ペルフェットのQUIRINALE(クイリナーレ)はビナセーコー社の技術力を端的に表した代表モデルの1つです。
ペルフェット QUIRINALE(クイリナーレ)
ペルフェットのQUIRINALE(クイリナーレ)はホールカットの靴です。
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古代ローマ時代の建国神話というものがあります。都市ローマの起源となったローマの七つの丘、アウェンティヌス(アヴェンティーノ)、カピトリヌス(カンピドリオ)、カエリウス(チェリオ)、エスクイリヌス(エスクイリーノ)、パラティヌス(パラティーノ)、クイリナリス(クイリナーレ)、ウィミナリス(ヴィミナーレ)
前6世紀の初めまでにこれら7つの丘の集落が合体して都市(ウルプス、ポリス)を形成したと言われています。
ペルフェットはブランド名がイタリア語ですし、フォルムに関して多くのモデルでイタリアの靴を踏襲しています。
そんなイタリアを強く意識したブランドが、ローマの七丘にあやかったモデル名をつけているので、代表モデルであることは間違いありません。
このクイリナーレを見ればすぐにただのホールカットではないことがわかります。キャップをはじめとして、ヒールカウンターなどをスキンステッチのひとつであるシャドウステッチであしらっているのです。
スキンステッチとは革の内部を手で縫い通す」縫製のことです。
靴の製作において、革のパーツとパーツを繋ぎ合わせる時や、飾りとして施すときに縫製をすると、通常は革の表と裏を糸が貫通します。
これに対し スキンステッチは、一方から針を入れた後、その反対側へは針を貫通させず、革の内部のみを縫い通すのです。
ちょっと手元がくるってアッパーに針が貫通してしまったら、全てがご破算になってしまうので、一瞬も気が抜けない作業です。
超絶技巧のひとつであり、これを施した靴がなんと5万円台で購入できるのは、驚愕のプライス設定であります。
エドワードグリーンのDover(ドーバー)はつま先のスキンステッチがあるだけで、日本価格で20万円オーバーですから、同じステッチに対してどれだけ破格の設定をしているかがわかります(Doverの金額が異様というのは触れないでおきましょう)
そしてこの靴に使われている甲革は贅沢にもイルチア社のミュージアムカーフを使っています。マーブル模様が美しいですね。
このマーブル模様もひとつひとつが手作業によって生み出されるのです。
当然高価な革なのですが、それを一枚革であるホールカット仕立て、さらにキャップ、スロートライン、ヒールカウンターのようにあしらうシャドウステッチ。
細かいところで言えば、地面に向かうほどテーパードされたピッチドヒール。ビスポークシューズの雰囲気がでますね。
ソールは当然伏せ縫いのレザーソール。半カラス仕上げもインクに染みなどもなく、非常に綺麗。
もう書けば書くほどこの価格であることが信じられません(笑)
使われているラストは791というペルフェットが持つラストで最もベーシックで代表的なラストです。
ボールジョイントに余裕を持たせ、つま先に向けてシェイプをかけるスクエアトウはイタリア靴を彷彿させます。
それでいてグッドイヤーウェルト製法によって頑健に作られているという強み。
まさにいいとこどりをした「完璧な」靴なのです。
国産靴に興味がある方はぜひお試しになってみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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