クロケット&ジョーンズのオールソール 分解写真付き

春になって新生活を迎える人も多いのではないでしょうか。

身の回りのものを新調したり、捨てたりと気持ちも一新されますね。

さて、今回は私も身辺整理の一環として、クロケット&ジョーンズの靴をオールソールに出しました。

クロケット&ジョーンズの靴は程よく時代感を捉えているので、イギリス本格靴のブランドの中では最もトレンディーな印象です。

しかし、革もきちんと値段相応のクオリティの高い革だと思います。

一時、かわいそうなほど「クロケット&ジョーンズの革はダメだ…」とかなんとか言われる筋合いがないほど叩かれていたものです。

私は、そうは思いません。クオリティは高い革です。

と、いうかクロケット&ジョーンズの革をけなせる人っていつもどんな靴を履いてるんでしょうか?

正直現行のエドワードグリーンだったら、ハンドグレードのクロケット&ジョーンズと何が違うの?っていうレベルまで、その差は埋まってきていると感じます。

それだけ世界的に良質なカーフがとれなくなっているということがよくわかります。

ただ、あえて言わせてもらえば、クロケット&ジョーンズの革は薄いです。

悪い言い方をすれば革がペラペラしていて、厚みやコシが感じられないのが、気になるところではあります。そういう意味で私は分厚いチャーチの革が好きです。毛穴とかは割と荒々しい感じですが、耐久性はチャーチの革の方があると思います。

今回は分解した写真もとれたので、どうぞご覧ください。

目次

ハンドグレードのクロケット&ジョーンズ

ハンドグレードのクロケット&ジョーンズの靴です。

オードリーのちょっと珍しいチェスナットカラーです。

ストレートチップなのに、チェスナットカラーなので、売れなかったのでしょうか?

死ぬほど安くなっていたので衝動買いしたものです。

今になって思えば我慢して、ベルグレイブを買えばよかったと思います(笑)

この色です!やはり我慢してベルグレイブにすればよかった…。

茶ストは個人的にとっても使いにくいデザインです…。

それほどパンチドキャップトウとストレートチップの違いは大きく感じます。

つま先にパーフォレーションがあるかないかの差って、こういう遊びのあるカラーの靴になればなるほど大きいです。

カジュアルカラーにはやはりデザインの遊びが欲しいと思います。

なお、クロケット&ジョーンズのチェスナットカラーは手入れをきちんとしないといけないカラーです。

手入れをちょっと怠って乾燥させると、色が一気に飛んで、美しいチェリーのような赤味が抜けて、さながら乾燥して腐りかけの萎びたニンジンのような色になってしまうのです。

クロケット&ジョーンズのチェスナットカラーを買う時は、この色味に合った靴クリームとデリケートクリームを使って丁寧に手入れをしましょう!

私はクレム1925のマホガニーと、ブートブラックのリッチモイスチャークリームを使っています!

中底に切れ目が入っている

さて、写真をみていきましょう。

真ん中をご覧ください。横に何列か切れ目が入っています。

職人さん曰く、クロケット&ジョーンズの靴のいくつかのモデルは中底に切れ目を入れているそうです。

こうすることによって、底の馴染みが早くなり、グッドイヤーウェルト製法の弱点である返りの悪さの克服を試みているようです。

クロケット&ジョーンズの靴は異様に沈み込む個体がありますが、なるほど、こういうところにも沈み込みの大きさが関係しているのかもしれませんね。

クロケット&ジョーンズのハンドグレードの靴はイギリス靴の中では、割と返りがいいと思っていたのですがこういうところに理由があったのです。

良い点と悪い点は表裏一体

なんでもそうですが、良い点があれば必ず悪い点が表裏一体になっているものです。

返りをよくするために切れ目をつけているのでしょうが、逆を言えば、中底に切れ目があるということは、中底が割れるリスクが上がることを意味します。

これが何を意味するか?グッドイヤーウェルト製法の仕組みをご存知の方なら、ご承知でしょうが、グッドイヤーウェルト製法の中底交換は、その靴を形作ったラスト(木型)を保管しているメーカーでしかできません。

と、いうかメーカーによっては中底交換をしてくれない企業もあります。

それは修理というよりも、もう靴を作り直すのと同じくらいの手間がかかるのでやりたがらないという理由もありますが…

一番の理由はグッドイヤーウェルト製法に使われる中底の厚さにあります。

グッドイヤーウェルト製法に使われる中底はマッケイ製法のそれとは、比較にならないほど厚く硬いのです。

ゆえに耐久性があるわけですが、それだけ硬い中底は純正のラスト(木型)を使わないときちんと形作れなくなってしまうので、交換ができないのです。

物理的には中底交換はできますが、まったく靴の形に合っていないまな板の上に足を乗せるような履き心地になってしまうので、それでは修理が出来たとはいえないのです。

もしかしたら、クロケット&ジョーンズの靴は中底交換も念頭に置いてこのような処置をしているのかもしれません。

そうでなければ、真の意味で堅牢な靴とは言えないと思います。

オールソールする時があればまた記事にします

なかなかお目にかかれない靴の内部。

こうやってみるとリブの深さもあって、国産のグッドイヤーウェルト製法の靴とはやはりコルクの量が違うことがわかります。

こうしたレポートは今後も続けていきたいなと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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コメント

  1. 通りすがり より:

    カーフは薄い方が高級品ですよ。

    • バーリーコーン より:

      高級かどうかというよりも、実用的な部分を兼ね備えているかという点が気になります。
      クロケット&ジョーンズの革は少しヘタるのが早いと思います。

      クロケット&ジョーンズの革よりも高級なHASSの革はクロケット&ジョーンズの革よりも厚みもあると思います。

  2. MT より:

    管理人様、はじめまして。
    毎記事大変興味深く拝見しております。

    私は革靴を好きになって日が浅いこともあり、今記事中の
    「正直現行のエドワードグリーンだったら、ハンドグレードのクロケット&ジョーンズと何が違うの?っていうレベルまで、その差は埋まってきていると感じます。」
    という一文が大変気になりました。
    世界的に良質な革の確保が益々困難になる中、「革の質」「製造技術」「価格」等のバランスについて管理人様はどのように思われますか?

    • バーリーコーン より:

      MT様
      コメントありがとうございます。
      エドワードグリーンとクロケット&ジョーンズのハンドグレードの場合、クロケット&ジョーンズの革が良くなっているというよりも、
      エドワードグリーンが下がってきて、どっこいどっこいになっているという印象です。
      その他詳しいことは本日記事にしましたので、ご覧ください。
      http://kagayakelife.com/2018/04/02/post-2364/

  3. 通りすがり より:

    カーフは薄い方がコストは高いので、クロケット&ジョーンズが薄いカーフを使っているのは、コストをかけてわざわざそうしているということが言いたかったのですよ。
    他に例えばロブパリのミュージアムカーフはペラペラですが、その一方、VASS?とかチャーチは耐久性を持たせるために少し厚めのカーフを使っているのでしょう。
    メーカーの考え方でどういうカーフを使うかは変わりますし、履く方は個人の好みで好きな靴を履けばいいのですが、クロケット&ジョーンズの革についてのご評価が低いように読んでしまいましたので。
    失礼を致しました。

    • バーリーコーン より:

      いえ、こちらこそわかりにくくて申し訳ありません。
      HASSというのはフランスの高級タンナーなんですけど、そこの革も無茶苦茶いいんですね。
      大体10万超えの靴にしか使われないようなタンナーの革です。

      しかし、それでも昔のピポディの革なんかには敵わないんです。