引き続きのChurch’s(チャーチ)の話題です。
先日紹介したように、軽く30以上ものラスト展開のあるチャーチ。廃盤になったものもありますが、限定的に復刻したりすることもあります。
プラダ買収後当時、ラスト73にかわって、新しく定番として出したのが、ラスト100というラストでした。
ラスト100は丸いトウが特徴的で、73と比べたときに大きくブランドイメージを損ねるような見た目ではなかったと思うのですが、ラスト73の復活を強く希望する顧客たちの声によって、ラスト100とかけあわせてラストをアップデートしたラスト173が誕生しました。
このラスト173は傑作木型といえるでしょう。ラスト73のオールドでブリティシュクラシックなセミスクエアトウのフォルムをそのままに、捨て寸は絶妙なバランスで伸ばして、より履きやすい靴になるように進化したのです。
ラスト100時代はラスト73から引き継いだ名作のコンサルやディプロマットといったモデルをラスト100を使って作っていましたが、ラスト173が台頭すると、自然とラスト100は消えていきました。
そのラスト100ですが、どうも一部の地域などで別注復活などをしているようで、たまに中古市場におもむろに顔を出してきます。先日記事投稿したラスト43の件でも感じましたが、歴史の深いブランドの全てを知るのは、たとえ従業員であっても難しいようですね。
さて、今回はChurch’sの王道ど真ん中を走るラスト173を用いたモデル、COWES(カウズ)を紹介していきます。
Church’s(チャーチ) COWES(カウズ)
Church’s(チャーチ)のCOWES(カウズ)は現行チャーチを代表するクラシックラストのラスト173を使用したダブルモンクシューズになります。
ラスト73の時代からあったかどうかはわからないのですが(少なくとも今まで私は一度も
見たことがありません)、どうもプラダ買収後の2000年以降に出始めたモデルの様で、ラスト100のカウズは中古品市場などでたびたび見かけることがあります。
今でもラスト173を使って継続して作られています。
ただし、クラシックコレクションの中には入っておらず、常時用意しているモデルではないようです。
実際、表参道のお店にいっても、カウズは置いてありませんでした。2年ほど前に伊勢丹新宿のメンズ館に置いてあるのをみかけました。
ブリッティシュメイドでもたま~にやっているみたいですね。今はチーニーに注力しているので、今後の展開はないかもしれませんが。
おそらくストックモデルとして在庫品を発注したのではないかと思います。
イギリスに行った人たちの話を聞くと、以前紹介した内羽根クオーターブローグのGranby(グランビー)と同じように、現地ではたまに見かけることがあるようです。
COWES(カウズ) モデル名の由来
カウズのモデル名の由来ですが、最初、ダブルモンクの2本のベルトが牛の2本角と連想されてつけられているのかな~?なんて思っていました。
イギリスの地名を調べてみるとイギリス南部のハンプシャー州サウサンプトンの南に位置する、ワイト島の北部のCOWES(カウズ)という街があり、どうもこの街の名前からとられているようです。
ワイト島はヴィクトリア朝にリゾート地として大衆化した場所で、自然が美しく、野生動物も多いそうです。島の西の約半分が特定自然保護地区にされているそうです。
また、ワイト島は白亜紀の堆積物によって形成されている部分が多く、世界的にも化石の宝庫として有名だそうですよ。
なお、カウズ自体は毎年世界でも有名な「レガッタ」というボート・ヨット競技の王立ヨット隊の本拠地があるということでも有名なのだとか。
ラスト173の長すぎず、短すぎない素晴らしいバランス感覚によって、クラシックにもモダンにも履きこなせる名モデルだと思います。
通常ダブルモンクの靴というと、流麗なフォルムをとっており、どちらかというと世間一般の方が考える、肩パッドなども抑えた“イタリア風スーツ”の力を抜いたスマートなスーツを着た方にお似合いのイメージがあります。
しかし、イギリスの武骨な表情を残したラスト173によって、「色気ムンムン」といったダブルモンク特有の過剰な雰囲気を極力抑え込むことに成功しています。
ですから、バリっとしたドライな2plyや3plyの生地を使ったイギリスの素朴なスーツなどには、その雰囲気がピッタリとあうのです。
これほど、素朴な雰囲気をもったダブルモンクというのも探すとなかなか見つけることができません。稀有な存在といっていいでしょう。
ダブルモンクに挑戦したいけど、あのちょっと洒落っ気が強いデザインに気押されてしまうという人でも、問題なく挑戦ができると強く思います。
ラスト173なので、履き心地、フィッティングとも抜群です。ヒールカップもカカトがひっかかるようにシェイプを利かせたうえで、深くできているのでカカトがスポスポと脱げるような心配もありません。
この隠れた名モデルは検討するべきではないようでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございます。