靴好きの人は色々な点から、靴を観察するものです。
そしてひとつひとつを吟味して、自分にとって良い靴かどうかを判断していくのです。
そして、革靴の良し悪しを語るときに、素材の良し悪しについて話がでますが、その中の1つとして話に出るのがライニングです。
高級靴に使われる副資材のライニングは、非常に柔らかく、馴染みが出た後の履きやすさは、それは素晴らしいものです。
革靴のライニングには大きく分けて、革製のものと、キャンバス(布)製のものの2つがあります。
これらの違い、良し悪しはどういったところにあるのでしょうか?
まず、これらのメリット・デメリットをまとめてみましょう。
目次
革ライニングの良い点
①革の特性として、形状記憶ししっかり足型に馴染んでいく。そのため長い目で見ると履き馴染みの良い靴へと変化していく
②耐久性が高く、破れなどに強い
③破れてもあとからパッチをあてて、補修することができる
④高級感がある
⑤どうしても靴が馴染まないとき、この革ライニングにデリケートクリームを塗り込むことによって、柔らかくすることが可能。早く履き馴染むように促進することができる
⑥デリケートクリームを塗ることによって、革の寿命を延ばすことができる
⑦カビが生えても簡単に除去することができる
革ライニングの悪い点
①最初は履き馴染みが硬く、馴染むまで時間がかかる
②布よりも通気性に劣る
③時折デリケートクリームなどでメンテナンスをする必要がある
④ライニングが色付きの場合、靴下などに色移りすることがある(時間の経過に伴いなくなりますが)
キャンバスライニングの良い点
①通気性が良く、蒸れにくい
②革よりも広がるので最初から当たりが柔らかく履きやすい
③コストが安い(メーカー側的に)
④通気性が良いためか、カビは生えにくい
布ライニングの悪い点
①履き馴染みが形状記憶されないので、長い目で見ると履き馴染みは革に劣る
②革に比べると傷みが出るのが早く、破れるのも早い
③ライニングに破れが出たあと、補修がしにくい(通常破れたところに革パッチをあてるものですが、布ライニングの上には接着剤が効きにくく、すぐ剥がれてしまいます。よって布ライニングが破れたあとは破れたままになることがある)
④やっぱり安っぽい
⑤カビが生えたときに落とすことが難しいケースに陥ることが多い
それぞれ良い点悪い点ありますが。
このように革ライニングと布ライニングの良い点、悪い点は様々あります。
今、高級靴というと布ライニングのものはほとんどありませんが、昔のイギリス靴を見ると、多くのモデルで布ライニングが用いられていました。
これは布ライニングに実用面で、大きなメリットがあるために使われていたのではないと思います。
おそらく、昔は今よりも革ライニングというのが貴重で高価だったのでしょう。
簡単に言うと、コストカットと資材の調達のしやすさで布ライニングを使っていたと考えるのが妥当です。
今でも昔ながらに布ライニングを用いて作られているモデルもあります。我らが日本、リーガルのロングセラー商品、「2235NA」というロングウイングチップのモデルは30年以上規格も変わらず、キャンバスライニングが用いられています。
キップレザーのシボ革です。
この昔ながらの仕様が安心感がありますね。クラシックな印象が高まります。
ロングウイングチップというと、アメリカ靴によく見受けられる仕様ですが、リーガルはアメトラブランド。そしてこのシボ革のアメリカ靴風というと「フローシャイム」や「ネトルトン」を思い起こさせますが、フローシャイムのビンテージシューズは布ライニングになっています。
また、昔のエドワード・グリーンやチャーチといったイギリス靴はライニングが布のモデルがとても多いのですが、こういった靴を彷彿させる佇まいがあります。
昔の靴は甲革の靴の品質が素晴らしいものがあるので、この安っぽさが少し和らぐような気がします。そして、勝手に脳内補正も利くので(笑)オールドさが良く感じてしまう…この都合の良さ!(笑)
この写真は旧チャーチのキャンバスライニング。
そしてこれは現行のチャーチの革ライニング。
昔のチャーチの革の良さが手伝っているので、窮屈さを感じないのですが、やはり時間をかけていくとその馴染みの差を強く感じます。やはり足の形に馴染んでいく良さは革ライニングを使っている個人的に現行のチャーチのほうが良く感じられます。
このような革馴染みが感じられるまで、本当に長い時間がかかるのですが、私が持っている5年以上履いた現行のチャーチの当たりの良さは別格です。こうなるんだ!と驚いたわけでもあります。
旧チャーチのほうでは、この感じが何となく感じられないのです。感じないというか良くも悪くも馴染んだ感じがしないというか、革の伸びがない感じ…。
個人的には革ライニングのもののほうが良いと思いますが、優劣をつけるよりかは、それぞれに無い良さがありますから、その良い点にクローズアップをしてみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございます。