白熱したオリンピックも終わり、日本の選手団が韓国から帰ってきましたね。
今回の平昌オリンピックで特に感動したのが、小平奈緒さんのライバル選手の健闘を称え労る姿です。
言葉が仰々しいですが、高潔の精神といって差し支えないのではないでしょうか。
私自身あの姿を見て、気が引き締まる思いでした。
ライバルであるイ・サンファ選手に何ともなくごく自然に寄り添っていました。日頃から人のことを気付える人でないと、ああいう行動は取れないです。
日頃の考え、習慣がその人を作るということですね。
自分で文章にしていて恥ずかしいです…
さて、今回は職場の同僚から質問された話を記事にしたいと思います。
「インポートの革靴ってハンドメイドって謳っている靴が多いけど、実際は機械を使ってるじゃん?それでハンドメイドって言っていいの?」
なるほど。たしかに「ハンドメイド」とはいいますが機械を使っています。
格好の例はクロケット&ジョーンズの高級ライン「ハンドグレード」でしょうか。
ハンドグレードとあるので、靴を全く知らない人にとっては言葉そのままに意味を理解してしまうと、完全に手で作った靴だと思いますよね。
ここ数日紹介しているイタリア靴はどのブランドもことあるごとに「fatt a mano 」=手作りと謳っています。
例えばサントーニやエンツォ・ボナフェなんかがそのいい例です。
いずれのブランドも「機械」を使っています。
そのような状況で「ハンドメイド」と「手作り」と謳っていいのか、と同僚は私に言いたかったのでしょう。
色々な意見はあるかと思いますが、私はこれらの靴を「手作りの靴」といって差し支えないと考えています。
それは製作現場をちょっと見るだけで納得するのです。
目次
イギリス靴の作業現場
イギリス靴は良くも悪くも「工場製品」です。
大勢の人間がひとつの工場に集まって、大量にラインから流れてくる靴を各パート専門の職人がいて、足数を効率的に積み上げていきます。
確かに工場ですが、その実態は私たちの多くが務めている会社に似ているといえます。
そのため、職人の気質として「サラリーマン的な側面」は大きいかもしれません。
イギリス靴ブランドの基本はグッドイヤーウェルト製法を使ったもの。完全に機械を使います。9分仕立てで作っているブランドはごくわずかしかありません。
イタリア靴の作業現場
イタリア靴は「工芸製品」という印象があります。
イタリア靴では、比較的手が出しやすいブランドからハイブランドまで「fatt a mano」という言葉を使う傾向にあります。その言葉の意味するところは「手作り」です。
日本で著名なイタリア靴ブランドには、大規模な工場を持っているブランドもありますが、どちらかというと、その多くは家族経営の少数精鋭で工房を切り盛りしているケースも多いです。
ここ数日ずっと紹介していたエンツォ・ボナフェなんかはそのいい例です。
サントーニは以前記事にしたように巨大な工場を持っていて、色付けの職人が50人近くいますが、底付けのパートの職人はほんの数名しかいないという話も有名です。
そんな背景もあってか、流れ作業的な雰囲気はイギリス靴ブランドに対して少なく、ふんだんに手作業を加えたクラフト感溢れる製品は、さながら「工芸品」のような雰囲気が出てきます。
と、まあざっくり話すと、イギリス靴とイタリア靴にはこのような差がありますが、どちらも出し惜しみなく手作業をふんだんに入れる傾向にあります。
実際に製造風景の動画を見てみましょう
イギリス靴、イタリア靴それぞれの性質こそあれど、手作りというのを謳うだけあって、製作現場では多くの手作業を加えていることが動画をみるとよくわかります。
まずはクロケット&ジョーンズの公式動画を見てみましょう。
「機械」を使い、流れ作業的な雰囲気はあります。
2分40秒前後の靴を吊り込むときも、機械を使っていますが、手も加えながら革を吊り込んでいきます。
また、実際に縫う時は職人が手を使いながら靴のラインに沿うように縫い上げていきます。
底付けの出し縫いをかける作業がいい例です。職人の経験と勘がなければ、この作業は成り立ちません。
イタリア靴からはエンツォ・ボナフェを見てみましょう。
9分仕立てを主に使っている工房だけあって、手作業を加えることの多い印象です。
1分35秒付近の、ラスト(木型)に靴を吊り込むシーンでは釘を打ち込んで、ハンマーで革を叩いて革を靴の形に成型していっています。
おそらく9部仕立てなのでしょう。そのため出し縫い以外は機械による縫いをかけません。その意味でクロケット&ジョーンズの靴に比べると手作り感にあふれるのは間違いありません。
しかし、一部機械を使っている場面だってよく見受けられます。
「Hand made」や「fatt a mano」をよく考える
「手作り」というと、全てを手作業のみで仕上げた靴しか「手作り」の靴といえないと感じる人もいるかもしれません。
しかし、いずれのブランドも、1足を作り上げるために手練れの職人による手作業を必要としています。
それがあるだけでも「手作り」といっていいのではないでしょうか。
別に不思議な表現でも誇大広告でもなく、純粋に「手作り」といえるものです。
単純に機械を使っている、使っていないだけで、その言葉の意味が変わるようなものでもないと思います。
厳密に言えば、ビスポークの靴だって、機械による縫いの作業に手を加えることよって出来ていますからね。
意固地に手作り=ハンドグレードと思うのではなく、その言葉の意味を製造現場を見て、改めて受け止めましょう.
最後まで読んでいただきありがとうございます。