今回はイタリア靴ブランドを紹介します。
イタリア靴には数多のブランドがありますが、その中でも特に有名かつデザイン的にも癖が少なく、それでいて美しいデザインと曲線美を出すブランド…。
それがSantoni(サントーニ)です。
目次
Santoni(サントーニ)の歴史
Santoni(サントーニ)は高級紳士靴における世界最大の製造地であるイタリア中部のマルケ地区に工場を構えるファクトリーブランドです。靴職人であるアンドレア・サントーニ氏によって1975年に創業されました。
イギリス靴ブランドのような100年以上になる重厚な歴史こそないものの、そのクオリティは著名なイギリス靴ブランドに比肩します。
創業当時からマッケイ製法、ブラックラピド製法、ノルベジェーゼ製法、ボロネーゼ製法、グッドイヤーウェルテッド製法、ボロネーゼグッドイヤー製法、ベンチベーニャ製法、サンクリスピーノ製法、ハンドソーンウェルテッド製法といったように、多種多様な底付けができる突出した技術力の高さがあります。
ブランドが標榜している「ワンブランド、ワンテイスト、ワンコンストラクション」の考えによって、「このデザインを活かすためなら、この製法を採用しよう」というフレキシブルな対応力がブランドに浸透しているのです。
底付け技術の高さは、ある意味でイギリス靴ブランドをはるかに上回るものがあるでしょう。
日本にサントーニの靴が輸入されてきたのは1994年。その後現社長である、アンドレア氏の息子、ジュゼッぺ・サントーニ氏が発案したレザースニーカーが大ヒットし、一気に人気ブランドの仲間入りを果たしました。
ちなみに半沢直樹シリーズを書いた小説家、池井戸潤さんの作品に「民王」というものがありますが、その主人公が履いていたのがサントーニのレザースニーカーでした(ちょっとチョイスが古い気がします…笑)
2000年代に入ってから、そのジュゼッペ・サントーニが社長となり、このブランドは一気にスターダムに上り詰めます。
会長に退いたアンドレアが朝5時から夜9時まで工場において白衣で過ごす根っからの職人であるのに対し、ジュゼッペはベンツを乗りまわし、最高のスーツと共に世界中を飛び回るビジネスマンでした。まず世界のビジネスウェアのカジュアル化を敏感に察知してレザースニーカーという分野からブランドを拡大しました。
その後、ドレスシューズのロングノーズ、パティーヌという2つの大きな流行を巧みに捉え、様々なキャラクターを持つデザインチームと熟練の手染め技術を持ったフィニッシングチームを大増員します。これにより美しい表情を持った革の良さを存分にアピールした工芸品のような、また毎シーズン刺激的なモデルを発表し続ける現在のサントーニが出来たのです。
現在、世界の高級靴ブームを牽引する存在となったサントーニが取り組むのはセクショナリズムの徹底です。レディース部門、スニーカー部門をそれぞれ別の専門工場を作って分化し、ドレスシューズは本体に残しました。それにより、職人たちは芸術品を作り上げる気迫と情熱を持ってその美しいドレスシューズ製造工程に手作業が残りました。
イギリス靴にはない、ぬくもりのある靴が出来上がる秘訣はここにあるのです。
こだわり抜いた製作現場
マルケに拠点を構えるサントーニのファクトリーは、革の選定から裁断、縫製、仕上げまで一貫して行う大規模工場だ。数百人の熟練職人と近代的な設備を備え、効率的かつハイクオリティな靴作りが行われています。工場の隣にはオフィスがあり、現在は会長職に退いたアンドレア氏、そして社長のジュゼッペ氏も常に品質をチェックしています。
新作をリリースする前に、ジュゼッペ氏は必ず試作品を半年履き、修正点などをまとめ、自身が納得したうえでリリースするようです。
社長自らモデル1つ1つの開発に手をかけるこだわりぶりです。
工場は2010年に新築されました。写真などを見ると、まるで一流の商社の施設のような綺麗なエントランスまである大施設です。
環境問題への配慮がテーマとされ、ソーラーパネルや排水を循環させて水を再利用するシステムなど、エコシステムが工場全体に採用されています。
マルケはイタリアの中でも田舎です。こういった自然と共和する工場づくりはとても素晴らしいものがあります。
昔の靴の革は良かった、とよく言いますが、その分環境に配慮の足りない危険な薬品を使って作られていたという側面もあるのです。
今、サントーニは環境、そしてだからといってクオリティを下げることなく、常に挑戦し続けている素晴らしいブランドなのです。
ラスト(木型)にもこだわります
ボリス、ライアン、イーグル、ジョージ、リンカーンなど人物名を冠したラスト(木型)によって、作られています。
イギリス靴のように番号によって管理されていないのが面白いですね。
公式ホームページなどでも、「このモデルはこのラストを使っています」という記載がなく、イギリス靴のように「このラストが…」という会話にあまりならないところを見ると、あまり重要視されていない感がありますが…(ラストはめちゃくちゃ重要なんですけどねぇ)
日本でよく見られるラストはジョージとボリスでしょうか。
使われている革も一流のタンナーばかり
イタリアはイルチア、ヌオバオズバ、フランスのアノネイ、アメリカのホーウィン社など著名で一流のタンナーの革を使っています。
そしてもちろん、その中でも最も上質なものを選んでいます。
特に16AWの靴では鹿や鮫といった珍しい動物の革をふんだんに使ったモデルも多く見受けられました。
そういったエキゾチックレザーもなんなくハンドペイントし、美しい表情のある靴を生み出します。
高級時計ブランドIWCも、サントーニのレザーに対する技術の高さを認め、革ベルトはサントーニのものを採用するほどなのです。
代表モデルは…
後日詳しく、この理由は説明しますが、
イタリア靴ブランドには「10年以上変わらず作り続けている定番モデル」というのはあまりありません。
それはサントーニの靴も例外ではありません。なのでクロケット&ジョーンズの「オードリー」やチャーチの「コンサル」的な名前までしっかり浸透しているようなモデルはありません。
そのほとんどが、その時その時の一期一会的な出会いの靴になりますが、それは商品のクオリティに比例しません。やはりクオリティはずば抜けています。
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例えばこのストレートチップはブラックラピド製法によって作られた堅牢かつ、しなやかさを兼ね備えた履きやすい1足です。
グッドイヤーほど張り出さないコバ、そして軽さがあるため、イギリス靴のような鈍重なイメージは全くありません。
今時の軽い生地によって仕立てられているスーツやジャケパンスタイルには、イギリス靴よりもむしろこういったイタリア靴こそ栄えるのではないでしょうか。
何よりもこういったハイクオリティの靴には、軽率な軽々しさなどみじんもなく、誠実な雰囲気がしっかりとあります。
また、イタリア靴ならではの柔らかな履き心地をローファーは享受しやすいですね。
サントーニのタッセルローファーは素晴らしいですよ。
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ここ最近人気の高いタッセルローファー。
オールデンとクロケット&ジョーンズのキャベンディッシュばかりクローズアップされていますが、タッセルローファーのような洒落た靴こそ、イタリア靴ブランドに身をゆだねるべきだと私は感じます。
サントーニのタッセルローファーはこのような感じ。
私が危惧するタッセルローファーに起こりがちな「子供臭さ」を感じる要素は一切排された瀟洒な靴です。
こんな靴を履きこなしてこそ伊達男です。履き心地も極めて柔らかいので、ストレスが少ないでしょう。
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ダブルモンクもイタリア靴ならではの流麗で、無駄のないすっきりした出来です。
こちらはマッケイ製法(ブレイク製法とも)が採用されており、コバはなく、すっきりしています。
そして先日紹介したこの靴も素晴らしいですね。
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花のような形の独特のパーフォレーションが特徴的なウイングチップ状のこの靴は絶対にイギリス靴ではありえません。
イタリア靴の魅力が凝縮されています
サントーニは技術力、デザイン力、そして品質が全て高次元でまとまったイタリア靴を代表するブランドです。
ハンドパティーヌによって作りだされる色味も息をのむ美しさです。
革底のカラーリングも素晴らしいですね。
普段はイギリス靴派の方も、ぜひこのサントーニだけでも一度挑戦してみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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