ノルウィージャンウェルト製法とノルベジェーゼ製法 その違いを解説!

つい先日パラブーツのミカエルを紹介しました。

このパラブーツのミカエルにもよく使われている製法がノルウィージャンウェルト製法です。

ところでこのノルウィージャンウェルト製法は見るメディアによって、ノルベジェーゼ製法と言われていたり、名称が定まりません。

このややこしさは一体どこから来るのか?

今回はこのノルウィージャンウェルト製法とノルベジェーゼ製法をそれぞれ解説し、その違いを明確にしていきたいと思います。

目次

ノルウィージャンウェルト製法

ノルウィージャンウェルト製法は防水のためにL字状に縫い付けられた幅広のウェルトが特徴です。ウェルト上に見える二重の縫いも大きな特徴で、縫い目が1本ではなく2本見えるのが、グッドイヤー製法との違いです。変形のグッドイヤーウェルト製法とも言えなくないような製法です。

図解をみていきましょう。



まず、中底に接着された縫いシロとなるリブ、ウェルト、甲革を水平に「すくい縫い」します。

これが靴が出来上がったときに、インパクトのある二重縫いの1つもなります。

そしてグッドイヤーウェルト製法と同じく、リブによって出来た空間を埋めるために、コルクが厚く詰められます。パラブーツの場合はコルクの代わりに独自のゴムをクッション材として入れています。

パラブーツはコルクよりもゴムの方が機能的であると考えているためです。

結局国内の修理店でオールソールすれば、もれなくこのゴムのクッション材は廃棄され、コルクに変わってしまうのですが…苦笑

そして仕上げに、ウェルト、ミッドソール(これは物によってなかったりするものもあるらしい)、ソール(本底)が「出し縫い」されます。

ウェルトが水平方向の「すくい縫い」によって中底へと連結され、垂直方向の2線の「出し縫い」によってミッド&アウトソールへと連結され、とても頑丈な作りとなります。

また、ミッドソールとアウトソールが二重になっていることで、防水・防寒に非常に優れています。

事実、半世紀前はスキー靴や登山靴にはこのノルウィージャンウェルト製法を用いていたのです。

そして、今なお作っているメーカーもあるのです。

ノルベジェーゼ製法

一方、ノルベジェーゼ製法は実用性も考慮されているものの、どちらかというとその装飾性にフォーカスを当てている面が強いのがノルベージェーゼ製法です。

ステファノ・ ブランキーニが完成させたとされる製法で、まるで荒縄のようなステッチが芸術的です。そう、芸術とも呼べる靴で、どちらかというとガシガシ履いて楽しむ靴ではなく、その製法やステッチワークを見て楽しむ靴だと、私は思います。

イタリアの靴、特に技術力が高い高級靴の中の高級靴ブランドが用いる製法です。このサントーニのノルベジェーゼ製法の靴は好例です。

製法の図解を見ていきましょう。

インソールに加工を施し、甲革をL字状に曲げて、インソールをすくい縫いにします。

その下にミッドソール(中板)をつけて一度目の出し縫いをかけます。これは補強のために行われます。

さらに最後にソール(本底)を2度目の出し縫いをかけてフィニッシュ。なんともまあ、手間のかかる製法なんですね。機械縫いはできないため、手縫いで作っていきます。

また、リブは構造的につかず、中物となるコルクやスポンジは入っていたり入っていなかったりまちまちです。

修理店によっては、オールソールの修理を受け付けないところもあります。

それもそのはずで、手縫いをしていかなければいけませんから、その手間を考えても、技術的に出来る出来ないを抜きにして、やりたがらないところも決して少なくはありません。



ウェルトを使わずアッパーをウェルトの代わりするため、ノルベジェーゼ製法の靴に使われる甲革には質が高く、ちょっとやそっとではヘタレない強度が求められます。

ゆえにイタリア靴でたびたび見受けられる靴の割には、革も厚さと硬さが感じられるものが多く、丈夫な印象です。

オールソールはすることができないわけではありませんが、出来る店が割と少なかったり(信頼がきちんとできるか否かという点も含め)、高額になることが多いので、完全に靴マニア向けの製法なような気がします。

こちらも雪の多い国などで登山靴として使われてきたのを背景として生み出された製法です。

こちらはリブを使っていないことも多いので、屈曲性は多少あります。とはいえ、分厚いソールとミッドソールによって作られているので、マッケイやボロネーゼ製法のような柔らかさがあるかといったら、それは全くないので過度な期待は禁物です。

ポイントはウェルトを使っているか否か

さて、こうして図解を見ながらだとお気付きの方もいらっしゃるでしょうが、このノルウィージャンウェルト製法とノルベジェーゼ製法の大きな違いは、ウェルトを使っているか否かにあります。

わざわざノルウィージャン「ウェルト」製法と言っているのにはそこに意味があるのです。

混同の原因

外側から見たときに目視できる、甲革に出ている水平のすくい縫い…

この縫い方が「ノルウィージャン縫い」と呼ぶことがあります。

よって、ウェルトがついていないノルウィージャン製法は、ノルベジェーゼ製法とほぼ変わりません。このことから混同されるのではないかと思います。

ウェルトがついていないノルウィージャン製法という珍品もあったりするようです。

ここまで複雑になってくると、難しくなってきますね。

明確にしなくてもいいような気がしないでもありません…。

なぜならば、呼称の違いをプロの間でも明確に区別していないからです。

色んな修理屋さんや靴屋さんをめぐりましたが、呼称は店、しかもスタッフによってまちまち。

ノルウィージャン(ウェルト)製法とノルベジェーゼ製法の区別はプロの間でも明確になっていないのだから、もうどっちでもいいんじゃない?と思ってしまうわけです。

ただし、明らかに甲革の前にウェルトをファクターとして縫っている場合は「ノルウィージャンウェルト製法」ときちんと呼ぶべきだとは私は思います。

それはきちんとウェルトを使っているからです。

その意味で、パラブーツのミカエルの多くは「ノルウィージャンウェルト製法」と呼んでいいのだと思います。

逆にノルベジェーゼ製法の多くは、ウェルトを使っていないわけなので「ノルウィージャンウェルト製法」とはいえないのです。

ポイントはやはりウェルトが使われているかいないかだと思います。

どちらも堅牢度の高い製法ですが、普段使いして長く愛用する靴が欲しいのであれば、ノルウィージャン製法くらいまででとどめておくのがいいかと思います。

パラブーツやJMウェストンのノルウィージャンウェルト製法の靴であれば、見た目のファッション性の高さと実用性が良いバランスでまとまり、長年愛用できる事間違いありません。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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