以前カバ革のグレンソンを紹介しました。
→激レア!カバ革のグレンソン
カバの革はヌバック状になっています。つまり銀面側を起毛させた靴ですね。
このグレンソンはおおよそ70年代に作られた靴で、いかにも洗練されていない古いイギリス靴といった感じで、全く格好が良くなかったです。
70年代、既製靴ブランドで堂々とイギリスとして売り出されていたのは、間違いなくほぼチャーチだけだったことでしょう。そもそもこのころ、日本にはグレンソンの靴は入ってきていません。
今でこそ有名になっているクロケット&ジョーンズもエドワードグリーンも当時は裏方としてOEM生産がメインでした。
クロケット&ジョーンズの靴なんて、死ぬほどダサい靴のオンパレードです。(チャーチもギョーザ靴で酷いフォルムのものが多かったですが)
この2つは70年代頃のクロケット&ジョーンズの靴です。
2枚目の写真はクロケット&ジョーンズが自社商品として出していた「SWAN 」ネームの靴。今のクロケット&ジョーンズからは想像もできないほど洗練されていません(笑)
このように立派なイギリス靴というのは意外となく…
グレンソンの靴が日本国内手に入るようになったのは、90年代末に大塚製靴が輸入代理店をはじめてからなのです。
今、グレンソンは大塚製靴の手からも離れ、輸入代理店は特にありません。うん…多分ないはず。ちょっと話が脇道に逸れますが、大塚製靴は横浜の工場も売り払ってしまったようですね。いったい今後の製造はどうしていくのでしょうか…?ブランド自体の存続も怪しい雰囲気が漂っています…。
と、まあ今日本に入ってきているグレンソンは並行輸入品であったり、ストック品が販売されているというような形です。
グレンソンの靴は今まで当サイトで何回か紹介してきました。
さすがに素材だけは勝てませんが、昔のグレンソンよりも、今のグレンソンのほうが見た目も履き心地もずっと良いと思います。
それはやはりラスト(木型)が現代風にモダナイズされたおかげというのが一番の理由でしょう。昔の靴は見た目も詰まっており、今日的ファッションには組み込みにくいですし、捨て寸が短い分履きにくい靴もしばしばありました。
それがティム・リトル氏が経営に参加するようになってから、グレンソンはモダンな靴を作るようになっていきます。
昔ながらの朴訥としたイギリス靴だけを作っていては、いかに歴史のある靴ブランドでもやっていけなかったことでしょう。
今回紹介するMacclesfield(マックルズフィールド)はモダンなエッセンスを取り入れて成功している靴のひとつです。
GRENSON(グレンソン) Macclesfield(マックルズフィールド)
GRENSON(グレンソン)のMacclesfield(マックルズフィールド)は新しいラストであるラスト103を使ったモデルです。
ラスト103というと、チャーチのシャノンに使われている真ん丸なラストを思い浮かべる人もいるかもしれませんね(笑)
グレンソンのラスト103はややノーズが長めのセミスクエアトウのフォルムになっています。
ラウンドの要素はかなり薄い角ばったセミスクエアトウです。
モダンな中にも、イギリス靴だということを忘れさせないオールドなフォルムになっています。
ノーズが長く見える要因は、先ほどのヤンコのパンチドキャップトウの靴と同じ理由で、キャップの面積が広く取られているという点が大きな理由になっています。
製法はもちろんグッドイヤーウェルト製法です。グレンソンが特にライバルとなる同価格帯の他のイギリス靴メーカーと比べ勝っている部分は、底が伏せ縫い仕様(ヒドゥンチャネル)になっているという点です。
これは大きなアドバンテージを持ちます。見た目がとても綺麗にみえます。手間暇もよりかけて作っていることがよくわかるポイントでもあります。
コバの張り出しはかなり控えめで、余分な部分を出来る限り削り取って、見た目のスマートさが強調されています。
チャーチのようなコバの張り出した靴と比べると、ずいぶん繊細に見えます。
それと同時にウエスト部分もかなりくびれていて、絞り込みが強い靴になっています。当然立体感もでて、履き心地の良さにも直結していきます。
ヘタなメーカーが土踏まずの部分を絞り込むと、コバを削り取る工程の上で、ウエストの部分の甲革に切り傷をつけてしまったりするものです。
しかし、グレンソンの場合はそういったことがなく、あくまで丁寧な仕事の上で靴が完成されています。
レースステイ先のカンヌキの部分にハーフムーンがついています。それがクラシカルな雰囲気も同時に感じさせる大切なポイントになっているのです。
ヒールカップは小ぶりで、深めに出来ているため、カカトが小さいといわれる日本人の足にもよく合います。
他の人と違う、通好みのイギリス靴を探している方には、このグレンソンのマックルズフィールドはピッタリではないでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございます。