昨晩投稿した1989年のファッションの話から続きです。
時はさらに1年遡った1988年、昭和63年に刊行された、MEN’S CLUBの別冊「男のブランド図鑑」を紐解いていきたいと思います。
う~んなんとも時代感を感じさせる表紙ですねぇ(笑)
さて、この時代のスーツはどんなブランドが席巻していたのでしょうか…。
目次
スーツのお値段
見てみると、ブルックスブラザーズ、J.PRESS、ダックス、リングヂャケット、アクアスキュータムなど今も残っているブランドがずらりと並んでいます。
これらのブランドのスーツで価格は65,000円~85,000円ほど。リングヂャケットで88,000円だったようです。そう考えるとリングヂャケットもずいぶん値段があがったものです。
この頃はいわゆるDCブランドが勢いを深めていたころでしょう。一気にスーツ量販店が力を増す夜明け前のような時代です。
雑誌を見ると、その勢いに淘汰されたであろう、今は亡きエーボンハウスが出していた最上級ブランドの「サウザンプトン」というスーツも出てきます。これで値段は158,000円。もはやブランドそのものが消え去ってしまったので、化石のようなブランドネームとなっています。
「サウザンプトン」という名前からお分かりいただけるかと思いますが、思いっきりブリッティシュに振り切ったスーツを作っていたようです。
これだけネットの情報が発達した社会において、この「サウザンプトン」のスーツに関しては全く情報がでてきません。こういったところに書物の重要性を感じたり…。ちなみに今「サウザンプトン スーツ」と検索すると、イギリスのサッカーチームの「サウサンプトン」に所属する吉田麻也選手のニュースしか出てきません。
このサウザンプトンも良い値段しますが、同じ雑誌で紹介されているヒューゴ・ボスは123,000円のスーツが出ているので、よほど気合の入ったスーツであったことが伺いしれます。
そして、このころには雲上ブランドになっていたのでしょう、ダンヒルのスーツは280,000円也。
気になる靴のお値段
さて、ここからは気になる靴のお値段を紹介していきましょう。
まず懐かしいのが、リーガルのイーストコーストコレクションやブリティッシュコレクションが出てくること。今はなきコレクションですが、価格は26,000円~35,000円ほど。
シェットランドフォックスで28,000円~32,000円くらい。今じゃ信じられないような価格です。
そして出てきましたチャーチ!
おそらくバークロフトと思われるモデルで48,000円、ウェストバリーで50,000円です。
グレンソンのストレートはこれよりさらに1万円安い。
J.Mウエストンも紹介されていて、180シグネチャーローファー(と思しきもの)が59,000円、フルブローグシューズで85,000円となっています。
この頃から既にウエストンは高い。それでもローファーはチャーチの靴と1万円ほどしか変わらなかったんだから、この開きは大きいですね。
実に羨ましい限りの値段設定の時代です。
そして出てくるのがエドワードグリーン。なんと価格はストレートチップで59,000円です!
チャーチと対して値段が変わらない!一応この時代ですから、もちろん旧工場になり、それはつまり現在のジョン・ロブと同じ工場ということなのです。
ジョン・ロブの靴とチャーチの靴の価格に大きな開きがなかった時代が確かにあったんですね。
ここでまた面白いのが、「ストレートチップ」という表現。このストレートチップと紹介されている靴を見てみると、明らかにセミブローグシューズであり、それがカドガンであることに気が付きます。この頃はセミブローグシューズのことを「ストレートチップ・メダリオン」と称しているので、呼称も日本ではまだまだ定まっていなかったのかもしれません。
はあ…この時代のカドガンが59,000円で買えるのなら、今すぐ買いますよ。
イタリア靴は元祖ビットローファー、グッチのビットローファーが載っています。
これが58,000円です。
さらには未だに根強いファンの多い、タニノ・クリスチーが載っています。これが65,000円ほど。タニノの靴を履いたことがある人ならわかるかもしれませんが、とにかくタニノの革はめちゃくちゃ柔らかく、靴擦れ知らずの素晴らしい革でした。その分ちょっともろかったりするんですけど、それでも現在の硬いくせにうたれ弱いヘッポコな革とは大違いですが。
こうしてみると、革靴の値段は私たちの給与が上がるよりもはるか高くその価格設定が挙がってしまっているんですね。
靴の価格があがるくらいなら、私たちの賃金も応じるようにあげてもらいたいのですが、なかなか難しいですね(苦笑)
このほかにも…
このほかにもネクタイの値段などを見ると、かなりしっかりしていて今の価格からすると1万円以上するだろうものが、6,000円ほどで購入できていたことがわかります。
ラコステも7,500円だから、当然安いし、フランス製だしで、羨ましさしか生まれません。
しかし、こうして嘆いていても、あと30年後にはブランドが消え去っている可能性もなくはありません。むしろ私たちが感知しえないところでヒッソリと暖簾をしまっているブランドも多いことでしょう。
2010年代を駆け抜けた証拠としてこのサイトが残り続けるのを私も願っています。
いつか誰かがアーカイブとして使ってくれることを信じて。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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