三陽山長　源四郎　ダブルモンクストラップシューズ人気の先駆け

クールビズの期間中のファッションが一般に定着したのは、私の記憶だと2012年頃かと思っています。

みんなジャケットも持たずに、社外へとでかけることも許される風潮も今では珍しいことではなくなりました。

ここ数年でまた夏の気温もグッと上がり、夏日を迎えるのも4月からになり、5月になれば完全に軽装で出歩く人も多いのではないでしょうか。

しかし、そんなクールビズも始まった当初は戸惑いの連続でした。

確かに暑いけれども、いざシャツ一枚で人と会うとなると、少々気が引けたりするものでした。

ジャケットも羽織らない、もしくは本当に薄手のアンコンジャケットを羽織るくらいの時、どんな足元にすればいいのかわからない人は、少なくとも私の周りをみても多かったと思います。

そんな服装の基準・概念が大きく変化したこの頃、シャツ一枚でも着合わせがしやすく、それでいてしっかり感もあり、他にないスマートな印象をもたらしてくれる革靴がフューチャーされ、その人気は一気に爆発し市民権を得るようになりました。

その靴こそダブルモンクストラップシューズでした。

紐靴にない軽快な雰囲気。シングルモンクのような保守的な雰囲気はなく、バックルがお洒落を演出します。

ノータイ姿に合わせても、紐靴でないために、足元が引き締まりすぎず、それでいてドレスコードを大きく損ねることがないこの靴は、働く男たちのお気軽洒落乙アイテムといったところでした。

このサイトをご覧いただいている方の中には、ご承知の方もいらっしゃることでしょうが…このダブルモンクストラップシューズで一番有名な靴というと、ジョンロブのウィリアムでしょう。ダブルモンクストラップシューズの元祖ともいうべき靴で、やはりダブルモンクストラップシューズが脚光を浴び始めた時、いつかは手に入れたいダブルモンクストラップシューズの頂点としてよく紹介されていました。

そして、このウィリアムに遅れじと各メーカーでダブルモンクストラップシューズを出したものです。

そんなダブルモンクストラップシューズの人気を後押ししたと、個人的に思っている靴があります。それが三陽山長の源四郎です。

三陽山長　源四郎

三陽山長の源四郎(げんしろう)はダブルモンクストラップのスタイルの靴で、三陽山長のアイコニックなモデルのひとつとして今なお作られ続けています。

三陽山長の靴の中でも、友二郎に次いで有名なのも、この靴がダブルモンクストラップシューズがフューチャーされた時に、それを先導するように売り出されていたからだと思います。

まさにダブルモンクストラップシューズ人気の先駆けであり、先導役だったのです。

バックルの形・大きさが抜群で、八の字のように広がるストラップの伸び方も美しいですね。

使用されているラストはR2010です。三陽山長の靴の中でも、最もベーシックなラストであるR2010はブランド10周年を迎えた2010年に生まれました。

2000に誕生した三陽山長の前身となった山長印靴本舖の時代から、10年間蓄積してきたデータを分析した結果、より小振りなヒールカップ、土踏まずを支えるアーチラインだけでなく、履き皺が綺麗に入るように計算して、二の甲を低く抑えた立体感のあるラストとなって完成しました。

ブリティッシュエッグトウ気味のラウンドトウと、セミロングノーズのシルエットがダブルモンクストラップシューズにはよく映えます。

ダブルモンクストラップシューズが人気を集め始めたあの頃、イタリア靴由来のとがったものや、極端なチゼルトウのもの、マッケイ製法で薄いソール周りの物も多かったのです。

源四郎のように、グッドイヤーウェルト製法でがっちりとした感じのものでありながら、スマートさも得られるダブルモンクストラップシューズというのは、大人っぽい落ち着いた印象があり、これから先どんな時に履いても問題がないだろうという安心感をもたらしてくれる靴は少なかったです。

それでいてイタリア靴と同じくらいカッコいい雰囲気があったので、この源四郎はよくフューチャーされたのだと強く思います。

クールビズ期間中に合わせる気軽なスマートシューズとしてはもちろん、スーツスタイルにも難なく溶け込むので、履き手も安心して履けることは間違いありません。

ソールは伏せ縫いのレザーソールが基本です。山長の靴に多いカラス仕上げの渋い仕上げ。

改めてこうやって靴をひっくり返してみると、強く土踏まずを責めているのがよくわかりますね。

キャップの長さがめちゃくちゃバランスがいいので、トンガリ靴にも見えないですし、それでいてモッサリした印象もありません。

まさにダブルモンクストラップシューズの人気が後押しされていたのは、この源四郎もあってのことだと思います。

2019年現在すっかりビジネスシューズの定番となったダブルモンクストラップシューズですが、その立役者の靴をこうして見つめ直すのも楽しいものです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。