最も装飾の多い靴であるフルブローグ、ウイングチップ。
このスタイルの靴を「フルブローグ」と呼ぶか、「ウイングチップ」と呼ぶかで、その人がイギリス靴が好きなのかアメリカ靴が好きなのかがわかります。
「フルブローグ」と呼ぶのはイギリス式で、「ウイングチップ」と呼ぶのはアメリカ式です。
私はアメリカ靴よりも、イギリス靴のほうが好きなので、このサイトではほとんど無意識のうちに「フルブローグ」と呼称していることだと思います。
もともとイギリスのカントリーシューズに起源をもつフルブローグの靴は、イギリスからの移民がアメリカ大陸に持ち込むと、その靴は起源はカントリー、つまりカジュアルだったのにも関わらず、時間が経つにつれてシティーシューズとしてドレッシーな靴へと独自に進化を遂げていきました。
やはり1920年代から40年代くらいまでにかけて、頻繁に見受けられるスペクテイターシューズは「ウイングチップ」のデザインをとったものが非常に多いのです。スペクテイターシューズは決してアメリカ靴に限った話ではありませんが、やはりアメリカ靴のイメージが非常に強いです。
実際にこの年代を舞台にした小説などを読むと、スペクテイターシューズを履いている描写がよく出てきますし、写真や挿絵などをみても、このスペクテイターシューズがいたって普通に着用されていたことがよくわかります。
スペクテイターシューズは黒や茶を基調として、白の部分を取り込んでいるので、切り返しの多いウイングチップの靴がコントラストをデザイン的にとりやすかったことからも広まったのではないかと思っています。それにスポーツ観戦時に履かれたそうですから、それこそちょっとカジュアルな雰囲気のある穴飾りのついた最適だったのでしょう。
さて、そんな「ウイングチップ」の靴ですが、アメリカ靴はこの「ウイングチップ」の靴が大の得意です。イギリスの靴とはまた違った雰囲気を必ず持っているものです。
そのひとつがロングウイングチップですが、オーソドックスなスタイルのウイングチップでも、イギリスのそれとは違う、趣のある靴をアメリカ靴で見つけることができます。
それが今回紹介するアレン・エドモンズのMcAllister(マクアリスター)です。
Allen Edomonds(アレン・エドモンズ) McAllister(マクアリスター)
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Allen Edomonds(アレン・エドモンズ)のMcAllister(マクアリスター)はいたって普通の内羽根の「ウイングチップ」です。
マクアリスターと呼ぶメディアもあれば、マカリスターと呼ぶメディアもありますが、当サイトでは「マクアリスター」と呼ぶことにします。
マクアリスターは、Park Avenue(パークアベニュー)と同じラスト65を使った、ベーシックなモデルです。
やはり大方のデザインに関しては共通しています。
広い履き口と6アイレットによって、ノーズがほっそりと長く見えるのが特徴です。元来のイギリスの「フルブローグ」の靴は捨て寸も短く、ドテッとした靴が多いのですが、先にも紹介したようにシティーシューズとして、洗練されていったアメリカの「ウイングチップ」の靴は、どこかドレッシーに見えるように工夫されているものです。アレン・エドモンズの靴の場合、ラストや細かなディテールにそれが見え隠れします。
さて、このウイングチップの靴ですが、よ~く見ると独特なデザインのオンパレードです。
ウイングの付け根は1の甲の部分がよく屈曲するのを考慮してか、頂点が短く設定されています。やはり、この頂点が長いと、中には足が擦れてしまう人もいるので、そういったデザインによる内容面の犠牲がないように、実用性を意識しているのがよくわかります。
そしてウイングのパーフォレーションが、レースステイ下のスロートラインにあしらわれたパーフォレーションとぶつかるように合流して、ボールジョイント部から、3~4cmカカト方向に伸びたところでは並行するようにほぼ重なった状態になっています。
こういったデザインはまずイギリス靴にはない、アレン・エドモンズのウイングチップ独特のデザインになっています。
ミニマルに凝縮された飾りが男くささを演出します。華奢な女性向けのウイングチップの靴ではほとんどみられないデザインです。
こちらの靴も当然360°グッドイヤーウェルト製法によって作られており、ウイングチップの重厚感がより活きる作りになっています。
これだけ「重み」を感じさせる靴ですが、シャンクが入っておらず、全面にコルクがしきつめられ、また製造工程において釘も使っていないため、足の屈曲に非常に馴染みが良いという点があります。
見た目の豪華さだけでなく、履き心地の面においても世界一を目指した、アレン・エドモンズの靴はやはり間違いなく一級の靴なのです。
デザイン性と履き心地の良さの両立に積極的なこのアレン・エドモンズのマクアリスターは、初めて「ウイングチップ」の靴に挑戦するという人にもおススメの一足です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。