平成元年=1989年。
1989年に始まった平成も、今年で終わり。
また新しい時代が変わろうとしている今、もう一度ファッションの歴史を振り返ってみたいと思いました。
平成が始まったのが、1989年。平成元年のメンズファッションを取り巻く環境は如何なる様子だったのかを当時の雑誌を見て追ってみたいと思います。
目次
1989年のフレッシュマン
今回参考にするのは、MEN’S CLUBの別冊、「ザ・フレッシュマン」なる雑誌です。
1989年というとバブル末期とはいえ、まだまだ景気に勢いを感じていた時代でしょうか。
バブルのスーツというと、肩パッドモリモリの「あぶない刑事」のようなファッションを思い起こす人もいるかもしれません。
実際、そのような雰囲気のスーツスタイルも出てきています。ダブルのスーツで下のボタン1つ掛けというのがいかにもバブルっぽいスーツです。しかし、このモデルさん男前です(笑)ですが、このような極端に時代感を感じさせるスタイリングはこれくらいのもので…
意外と普通のスタイリングのスーツ姿もあります。
というか、こんな感じが8.5割くらいを占めているでしょうか。さすがメンクラ王道のファッションスタイルは外しません。
ジャミラのような肩パッドも入っていませんし、ナチュラルショルダーな感じですね。まあ、しいて言えばプリーツ入りとハイウエストで、裾幅がやや広め…22㎝くらいのスラックスというのが時代感を感じさせるポイントかもしれません。
日頃当サイトをご覧になられている方は、プリーツ入り+ハイウエストというのは、今のファッションの流れであることはご承知かもしれません。
時代は30年を経て回ってきたと考えると非常に興味深い資料です。
しかし、清潔感のある誠実なスタイル(文面からするとそういうことでしょうか?)を「ハードな感じで着る」と表現するところが時代感を感じさせます。ハードって(笑)
ハードがあるならソフトもあるのか?
もちろんありますソフトな着こなし。
「ソフトな感じで着る」のポイントは全体に淡いトーンで構成することだそうです。金融関係・公務員向きというよりかは、代理店・出版関係のような割と自由なスタイルの企業に向けたファッションイメージらしいです。
これまたいたって普通。
むしろこのころからスーツにポケットチーフを入れることをファッション誌はさりげなく勧めていたわけです。多くのサラリーマンは気恥ずかしさ、目立つことを避けるためかポケットチーフを日常的に使っていませんが、すでに30年前からポケットチーフを入れるスタイリングは雑誌を通して提案されていたわけです。
なぜ、30年も経た今もポケットチーフを入れる習慣が浸透しないのか?というのも今後考えてみるのも面白いかもしれません。もっとも今あげた「気恥ずかしさ、目立つのを避ける」というのが正解なのかもしれませんが…。
フレッシュマンに推奨の靴、一番目はフルブローグ!
さて、スーツを見てきたところで、今度は靴を見ていきたいと思います。
89年のフレッシュマンにおススメしていた靴はなんだったのでしょうか。
このページをめくると…
なんとフルブローグシューズが一番最初に来るんですね。
よくよく注意してみると、なんと先ほど紹介した「ハードな着こなし」のスタイルにお勧めしている靴がなんとフルブローグシューズ(ウイングチップ)なのです。
つまり、金融関係・公務員の人でも十分履くことのできる靴として、メンズクラブはフルブローグの靴を推奨していたのです。
これには驚きました。
2010年代初頭の就活本・新入社員向けのファッション雑誌をみると「ブローグシューズのような装飾性の強い靴は履かないこと!」くらいの勢いで罵られているというのに、いったい89年から10年代初頭の約20年近くの間に何があったのか?と思ってしまうほどの変わりようです。
巡り巡って2019年の今はフルブローグシューズが再注目されているのが素直に嬉しく思います(トラッド好きなので)
画像が不鮮明で恐縮ですが、チャーチのチェットウィンド(と思しき靴)がここにも紹介されています。お値段52,000円!なんとも良い時代です。
フルブローグシューズの次に出てくるスタイルは…
ストレートチップの靴でした。
ここも、よ~く注意してみると面白い点があります。
セミブローグシューズやクオーターブローグなども一括りに「ストレートチップシューズ」というジャンル分けをされているのです。
これも興味深いですね~。
じゃあ、「ストレートチップシューズ」の次はなんなの?
Uチップの靴でした。
これはすごいな。フルブローグ、ストレートときて、その次にUチップが出てくるんですよ。
紹介は省略しますが、このUチップの次に、プレーントウの靴がでてきます。
ほとんどが4~5アイレットのゴロゴロとしたアメリカンテイストなプレーントウですが、なかには内羽根プレーントウというスタイルも紹介されています。
Uチップの前にプレーントウを紹介するべきなのではないでしょうか。これがもしかしたらポピュラーなスタイルだったのかもしれませんね。
1989年の大卒初任給から見てみる靴の価格
さて、さきほどチャーチの靴が52,000円だったと紹介しましたが、大体どれくらい高価に感じるものだったのでしょうか。そこで大卒初任給をベースに比較してみることにしました。
果たして1989年の大卒初任給はいったいいくらだったのでしょうか。
調べてみたところ、16万900円でした。
大卒初任給の32.3%くらいの価格であったことがわかります。
2018年は20万6,333円。
同じチェットウィンドの正規価格89,640円(税込)で比較してみると…
大卒初任給の43.4%を占める価格となります。なんと10%も上がっているんですね。これは高い。
チャーチに限らずなのですが、全てのほとんどすべてのインポートシューズが今と比べてはるかにお手頃価格なのです。
コンサルは48,000円、ジョンストン&マーフィー(もちろんアメリカ製だったのでしょう)も39,000円、シェットランドフォックスは32,000円だったようですから、なおさらお手頃価格。むむむ~。
確かにこの頃と比べると、「あの頃はよかった」と言われちゃうわけですね。
値段だけでなく、革の質そのものも現行品と比べると、素晴らしいものが多いので、余計そう感じるかもしれません。
私もこうして雑誌を通して靴を見ても、明らかにステッチなんかは細かいのがよくわかります。と、いってもそれが必ずしも品質の高さにつながるわけではないことを私は身をもって経験したわけですが…。
まとめ
ちょっとファッション誌を振り返って見てみると、面白い発見に溢れていることに気が付かされます。
今回の記事はほんのさわりにすぎません。いくつかネタがあるので、それはまた紹介していきたいとおもいます。
チャーチのチェットウィンドは正規店はなかなか高いですが、楽天市場に出ている並行輸入品はまだまだお手頃価格です。これくらいで、当時と同じくらいの価格の感覚でしょうか。
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いや、今は働けば働くほど必ず給料があがり、企業も成長する!という概念はとっくに消え去っていますから、心理的には並行輸入品でも多くの人は割高に感じることでしょう。
でも、30年という時を経ても、いまだにこういったドレスシューズは必要とされているわけです。革靴のもたらす社会的信頼感たるや、ただただ脱帽するしかないな~と私は感じ他のです…。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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