日本靴ブランドの紹介を今回はしていきたいと思います。
日本の靴というと、作りは丁寧だけれど雰囲気はインポートシューズブランドに大きく劣るということがちょこちょこと言われていましたが、今やはるか昔の話で、様々な日本靴ブランドがブランドの威信にかけて素晴らしい靴を作っています。
日本の本格靴ブランドが注目され始めたのはいったいいつ頃なのか?
日本の靴ブランドでも大塚製靴や銀座ヨシノヤ、リーガルなど古くからやっているメーカーもありますが、これらのブランドが日本靴ムーブメントを引き起こしたのではないと思っています。
間違いなく日本靴ブランドの人気に点火したのは「三陽山長」が生まれたからほかにありません。
そう、日本の靴ブームを牽引したのはこの「三陽山長」なのです。
三陽山長が生まれたのは2001年。日本靴ブランドに陽の光があたったのはまさにこの2001年が元年と思うのです。
目次
三陽山長の歴史
三陽山長は2000年に創立した山長印靴本舖が前身。あのバーバリーで有名な(※今はバーバリーの版権は三陽商会から離れています)三陽商会がプロデュースをしてスタートします。
翌2001年三陽商会は商標を買い取り、「三陽山長」というブランドが誕生しました。
靴好きならこのお二人の名前を知らない方はいないかと思いますが…シューデザイナーの重鎮、長嶋正樹氏と引退された伝説の靴職人、関信義氏とのコラボレーションが話題となりました。
インポート全盛であった日本の本格靴業界に一石を投じることになったのです。
三陽山長は日本伝統の「匠」「技」「粋」をコンセプトに、日本の「和」を打ち出しています。日本の古い商標のようなロゴマークからもそれが読み取れます。何だか老舗の醬油メーカーのロゴみたいですね。
また、ブランドのホームページをご覧いただくとお分かりいただけますが、家系図のような靴の体系が作られており、モデルネームも「勘三郎」とついていたり
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とことん「和」尽くしなのです。
また、数ある日本の靴ブランドの中でも、特に三陽山長はその品質にこだわっていて、最高級の素材を惜しみなく使用し、熟練の技を持つ職人が高品質な靴を作っています。
主に使われる革はアノネイやイルチアなど。他社が使っているアノネイのレザーよりも、ワンランク上なのか、三陽山長の靴に使われている革は透明感とみずみずしさがあります。
製造は台東区のシューメーカー「セントラル製」が行っています。
セントラルの靴というと、トレーディングポストの靴を手掛けていたり、会社名をブランドネームにした「セントラル」をワールドフットウェアギャラリーで打ち出していたり(今はなかったと思います)日本の靴ブランドの中でも、その動向が見逃せないシューメーカーです。
セントラルの靴というと、イギリス靴では考えられないほど手作業を工程に組み込んで作っていることで有名で、革の吊り込みなども手作業で行うこともあるようです。ヒールカップも手で吊り込み、立体的に作られたヒールカップはカカトが小さい日本人には非常に嬉しいピタッとしたフィット感を得ることができます。
インポートシューズは総じて日本人の足には大きい場合がありますからね。
三陽山長といえば「ヤハズ」から有名に
名前や製造が日本ということだけが「和」を体現しているわけではありません。
三陽山長が誕生したとき、話題になったのが、日本特有のコバ回りの仕上げ方「ヤハズ仕上げ」でした。
ヤハズ仕上げはもともとダブルソールの靴のコバをV字に切り込みを入れるように仕上げることで、シングルソールの靴のような華奢な雰囲気を出すというのが目的です。
このヤハズ仕上げを既製靴ブランドの意匠の1つとして復活させた立役者なのです。
「これが日本の高級靴である」と言わんばかりに打ち出したヤハズ仕上げにより、三陽山長の靴は各雑誌にフューチャーされ、人気を高めていったのです。
ヤハズ(矢筈)とは本来は矢の尾部へV形に加工された弓弦を受ける部分の名称です。
この写真の靴はリーガルですが…。これがヤハズ仕上げです。
ヤハズ仕上げだけにとどまりませんが、日本の本格靴ブランドを牽引した三陽山長の靴には、インポートシューズブランドにはない様々な細かいディテールがあるのです。
※ちなみに最近の三陽山長にはヤハズ仕上げをしているものはほとんどありません
三陽山長のラスト
三陽山長のラストにはいくつか種類があります。
公式ホームページに詳しく説明があるので、引用文をご覧ください。
R202
三陽山長の原点。ショートノーズのラウンドトゥにボリューム感あるシルエットが特長です。
2016年にヒールカップを小ぶりに、二の甲を低く抑え現代の足型に合うようアレンジを加えています。
後足部は踵でしっかりホールドし、前足部は適度なゆとりを持たせることで快適な履き心地を実現しました。R201
2001年にR202の後継として作成されたラウンドトゥラスト。
あえて凹凸を抑えることで万人が履きやすい設計となっています。R303
三陽山長の中で最もロングノーズなスクエアトゥラストR303。
シルエットを細身に、ヒールカップを小振りに、甲を低く抑えることで華奢な足の方でもしっかりしたホールド感を味わえます。R305
2007年にR201をベースに開発したラストR305。R201より足入れ感を良くし甲高幅広となっています。
ヒールカップ、土踏まずを絞ることで後足部のフィット感を高め前足部は余裕のある履き心地です。
三陽山長では比較的ロングノーズなラウンドトゥです。R2010
ブランド10周年を迎えた2010年に登場した三陽山長を代表するマスターラスト。
10年間蓄積してきたデータを分析し、過去から現在の足型の変化を反映させました。
R201をベースとし、踵をホールドする”小振りなヒールカップ”、アーチを支える”絞り込んだ土踏まず”、美しい履き皺を生み出す”低く抑えた二の甲”で立体的な造形美とフィット感を実現しています。R309
2010年より展開している定番のスクエアトゥラストR309。
R303をベースにノーズを短くすることでスタイリッシュでありながらスタンダードな外見となりました。
ヒールカップを小振りに、甲を低く抑えることで華奢な足の方でもしっかりしたホールド感を味わえます。R2013
2013年春、R2010をベースにスリップオン用として開発。
よりヒールカップを小振りにし、より甲を低く抑えることでスリップオンでも踵の抜けにくい設計となっています。
また、ボリューム感ある外見から2015年よりカントリー調のレースアップシューズにも採用されています。R3010
2016年春、三陽山長を代表するラウンドトゥR2010とスクエアトゥR309を融合し、「極み」コレクション専用として開発。
ラストの丸み、膨らみ、絞り、流れるような曲面が機能美を極めたシルエットとフィッティングを生み出します。M3011
2017年春、R305の後継として作成されたラウンドトゥラストM3011。
R305同様、前足部は甲高幅広で足入れ感を良く、後足部はヒールカップ、土踏まずを絞ることでフィット感を高めています。
また、R305に比べノーズを短くすることで、よりオーソドックスな外観となっています。R2017
2017年秋、三陽山長の持つ技術の粋を集結したコレクション「匠み」、そしてその専用ラストセミスクエアトゥR2017を開発。
日本では従来レングスは5mmピッチですが、小さな足と大きな足では同じ5mmでも異なるはずです。そこでR2017では平均サイズである25.5cmを境に、下は4mmピッチ、上は5mmピッチという他に類を見ない2段階ピッチを実現しました。
ラストのベースはR2010、ヒールカップをより小振りに、土踏まずをより絞り込み、二の甲をより低く抑え立体感に富んだ設計となっています。
代表作 友二郎
三陽山長の靴といえば、友二郎ではないでしょうか。これで「ともじろう」と読みます。
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使われているラストは2010年より三陽山長の定番となっている、R2010を使用しています。
小振りなヒールカップ、絞り込んだ土踏まず、低く抑えた二の甲によるしっかりとしたホールド感がグッドポイント!インポートシューズに比して、やはり日本人の足を研究しているのがよくわかります。カカトが大きい方にはちょっと小さすぎるように感じるかもしれません。
ウィズもEウィズとFウィズの両方を用意しており、幅広の方にも満足してもらえるようになっています。
ソールは伏せ縫いで漆黒のカラス仕上げ。高級感溢れる仕上げになっています。
また、雨の日の重大な場面でも履けるように、ラバーソールの友二郎もあります。
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ビブラムのポイントソールを使用しています。
以前、ダイナイトソールとビブラムポイントソールの比較をしたことがありますが、ダイナイトソールに比して、ビブラムソールのほうが頑丈でスリップしにくい印象があります。
匠 友二郎
さらに友二郎には、匠 友二郎という上級ラインがあります。
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カカトには縫い目のでないシームレスヒールを採用、グッドイヤーウェルト製法なのですが、リブテープを使わず、革を起こして機械ですくい縫いを行う、ハンドソーンウェルト製法に近いグッドイヤーウェルト製法が特徴で、通常のグッドイヤーウェルト製法では考えられないしなやかな返りの良さが得られます。
さらにこれよりも上ランクの日本橋髙島屋S.C.限定で、二代目 極み友二郎というものが存在します。価格も国産既製靴の中では最高峰の16万円(+税)という商品になっており、一見の価値ありです。
三陽山長の靴は三陽商会が革を仕入れているために、非常にしなやかで高品質な革を使えていることも見逃せません。
国産靴ブランドを検討されている方は、今一度三陽山長に注目されてみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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