クロケット&ジョーンズについて続きます。
先日クロケット&ジョーンズの靴について、世界に名だたるブランドに完全に変わったというお話をしました。
その時にも触れているのですが、それは映画007シリーズにおいて採用されたことも、ひとつの証といえるでしょう。
クロケット&ジョーンズの靴が007で使われたのは、007シリーズ50周年記念作、第23作目のSkyfallからでした。
このSkyfallですが、ジェームズ・ボンドは映画の最初から最後までクロケット&ジョーンズの靴を履いています。
このSkyfallの中で最もファッションが印象深いシーンの1つは、上海で潜入者リストを奪った暗殺者パトリスを追跡するシーンです。
アメリカのデザイナーズブランド、ビリーリードのPコートを着て、タイトにすっきりとシンプルにまとめた服装のジェームズ・ボンドは世界中の観客を虜にしました。
この時着用していたPコートはボンドPコートとして、何年かの間、ビリー・リードで「Bond Peacoat」コレクションとして売り出されていました。
このシーンでボンドの足元を支えているのは…
クロケット&ジョーンズのTetbury(テットバリー)というチャッカブーツのモデルです。
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ラストには「348」というイタリア靴的な、先端にかけてシェイプの利いたスタイリッシュなデザインのラストを採用しています。
チャッカブーツながら、丈も比較的高く、ジョージブーツとまではいきませんが、チャッカブーツらしからぬドレッシーな印象を見るものに与えます。
特にボンドが履いているのが、黒のスムースレザーで、深いネイビーのPコートに黒のネクタイを締めたダークトーンの服装に合わせたものであるために、よりその印象が強く残るのかもしれません。
ラスト348の先端にかけてナローになっているシルエットがノーズを長く見せます。
ラスト348は本国イギリスでは一番人気のベストセラーのラストとなっていて、イタリア靴を彷彿させるチゼルトウが研ぎ澄まされたような印象を与えてくれます。
クロケット&ジョーンズのチャッカブーツというと、チャートシーというカントリーでコロッとしたデザインのモデルが有名ですが、同じブランドでも使用する木型で全く印象が変わることがよくわかります。
こういったラストを使ったものだと、スエードだけでなく、ボンドのように黒の表革で、ビジネススタイルに合わせることこそ、この靴の雰囲気、魅力を倍加させると感じます。
本底にはダイナイトソール仕様になっており、滑り辛く、擦り減りに強いラバーソールが諜報員の任務遂行を円滑にします。
個人的な印象ですが、クロケット&ジョーンズが使っているダイナイトソールは日本で修理に使うダイナイトソールよりも、硬くすり減りが遅いように感じます。もしかしたら、素材から別注しているのかもしれません。
履いた印象としては、ボンドと全く同じ黒のスムースレザーを履くと、最初は履き口まわりが硬く、足が擦れて痛いかもしれません。
しかし、履き口まわりも必ず革馴染みの出る部分ですから、安心していいでしょう。不安であれば履き下ろす前、そして履き下ろしてしばらくはデリケートクリームを使って柔らかくするといいでしょう。
ジョージブーツやスムースレザーのチャッカブーツには付き物なので、最初は我慢が必要です。
このラスト348は日本人には、少々踵の大きいラストですが、クロケット&ジョーンズの革はしなやかで、履き馴染んで返りがついてくると不思議と最初の踵のゆるさを感じさせない、収まりの良い靴へと変化していきます。
黒のスムースレザータイプを選ぶのであれば、やはり服装はスーツに合わせるといいでしょう。
チャッカブーツのなかで、スーツスタイルにも十分合わせられる稀有なブーツです。
そろそろ寒い季節がやってきます。
この冬は屈強かつドレッシーなチャッカブーツで、街を歩いてみてはいかがでしょうか。色違いやスエードタイプも綺麗ですよ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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