旧チャーチのBuck(バック)は鹿革じゃない! カーフですよ!

先日、旧チャーチの記事をアップしましたが、その前回の記事

そして前々回のチャーチの概要の記事を持ってしても、チャーチの1つ1つのモデルの歴史の深さに、語り尽くせません!

旧チャーチだけを抜き取って考えても、ビンテージシューズの中で手が出しやすいのと同時に恐ろしいほど奥深いブランドのため、1度深みにはまると抜け出せない強烈な魅力があるのです。

さて、今回の記事は、前回の記事で詳細に語れなかった、Real Cape Buckについて語ります。

このReal Cape Buckを使ったモデルに、旧チャーチファンにはお馴染みの「Buck」というモデルがあります。ラスト73を使った、チェットウィンドと同型で、Real Cape Buckを使って作られたバージョンのものが「Buck」です。

さて、この革、「Buck」とありますが、本当に正真正銘のバックスキンなのでしょうか。

ん?それってどういう意味?

もちろんその意味にお答えしますよー!

今回はこのBuckに関して疑問をお持ちだった方、初めてBuck、および詳しくバックスキンの話を聞く方も必見です!

目次

そもそもバックスキンって?Buckって?

皆さんは「本来のバックスキン」というものをご存知ですか?

今でこそバックスキン=スエード(革の裏側をサンドペーパーなどで擦って起毛させたもの)という認知が広まっていますが、バックスキンとは本来、スエード革全般のことを指すものではありません。

バックスキンとは本来、「Buck Skin」と書きます。

この「Buck」とは雄鹿のことを指し、本来のバックスキンはこの雄鹿の銀面(表側)を逆立てたもののみを言います。

なぜ起毛させるかというと、そのままだと野生の鹿は皮に生傷が多く、製品化するときに革目に傷が目立ち美しくないためにスエード状に逆立てるのです。

バックスキン=スエードという今一般に広まっている認識は、スエードが裏革(Back Skin)であることから混同され広まったのです。

なお、起毛素材には同じく「ヌバック」がありますが、これは鹿革が貴重であるため、代用として牛の表皮を起毛させたことにより「New Buck」が生まれました。この「新たなバックスキン」の意味である「New Buck」が転じて訛り、ヌバックとなったのです。

このように、バックスキンは本来であれば、雄鹿の銀面を逆立てたものが正式なのです。

旧チャーチのBuckは鹿革なの?

このフワフワモコモコの起毛感、鹿革そのもののようです。

しかし、結論から言うと、Real Cape Buckは鹿革ではありません。

このサイトにあるように、カーフの裏側を起毛させた、よくあるスエードということで間違いありません。

わかりやすく写真に納めていなくて、申し訳ないのですが、その証拠はBuckのタンの部分を見るとわかります。

タンの裏側を見ると、革の銀面側が裏面になっているのがわかります。

ダークブラウンカラーのグレインレザーのようになっている部分こそ、銀面である証拠です。

これでは、正真正銘のバックスキンとは言えません。

なぜReal Cape Buckが鹿革だという認識が今も抜けきらないかというと主に理由は2点あります。

1つはBuckというモデルネームがついているという点。

そしてもう1つは鹿革でないと判明した後も延々と鹿革と騙る人間がいるという点です。

誰とは言いませんが、そういうのやめた方が良いと思うんですが。

このReal Cape Buckって何なの?

私が以前チャーチにメールで質問したときに得た回答は「カーフのスエード」ということでした。あまりにありふれていて呆気にとられてしまうような回答ですが、Real Cape Buckと謳うだけのことはあって、本物の鹿のバックスキンのようにふわふわとした柔らかな質感と毛並みが特徴です。

インターネットを見ていると、「アンテロープレザーをスエードにしたもの」という答えがチャーチから返ってきたという証言もあります。この証言は信憑性は高いと思います。

やはり独特の起毛感が牛のスエードの様ではないからです。

このアンテロープというのは、チャーチの素材名でいうところの「Honey Kudu Antelope」にあたる、クーズーというウシ科の動物の名前です。まあ、カーフといえばカーフなのでしょうか。

クーズーはこんな感じの動物です。

見た目が牛のような鹿のような不思議な動物です。

革素材は表革は自然化でついた傷が特徴のエキゾチックレザーです。

このクーズーという動物はウシ科の中でもブッシュバック属に属する動物で、ブッシュバックは英語で「BushBuck」と書きます。

私はこの「BushBuck」から「Buck」という言葉が抜き取られたのではないかとにらんでいます。

余談:チャーチに鹿革のモデルはなかったの?

なお、チャーチに鹿革のモデルがなかったのかというと、そういうわけでもなくDEER SKINという名称で鹿の革をやっていました。

普通DEER SKINというと、バックスキンに関わらず、全ての鹿革を指すのですが…。

しかし、この鹿の革こそ正真正銘のバックスキンだったようで、当時のチャーチのカタログをみるとブラジルのバックスキンだったようです。

確かに通常のスエードとは全く別物で、柔らかくしなやかなスエードです。このDEER SKINのモデルは、ほとんどがライニングを施さない一枚革として使われ、柔らかさを売りにしています。

それでもReal Cape Buckの価値は下がらない

Real Cape Buckは鹿革ではありませんでしたが、それでもその独特な雰囲気と、起毛感は現在のスエードにはない素材感です。

クラシックなラスト73を携えた内羽根ウイングチップの「Buck」はやはり名作で、その素材感とシルエットは、これからもクラシックシューズ愛好家の中で、その人気が衰えることはないでしょう。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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