タッセルローファーが流行っていたり、シングルモンクの靴を流行らそうとしたり、ファッション業界(靴)はあれやこれやと動きまわっています。
そうしないといつまで経ってもムーブメントも起きないですし、代わり映えもしなくてつまらないですよね。
とはいえ、ファッション業界に身を置いていない限り、流行り廃りもないデザインに最後は落ち着くものです。
私も年を取って、雑誌の服を追っかけまわすということはめっきりなくなりました。
自分の本当のお気に入りだけが手元に残るように出来ているものです。
そういう意味で、2転3転して私が今とっても気になっているのが、プレーントウダービーシューズです。
靴好きの方の中でも、あまりここに着目する人はいないかと思いますが、先日暑苦しく語ったようにプレーントウの靴というのは奥深いものです。
逆に突き抜けて靴が好きな人、足に特に何の問題もないのにビスポークシューズに手を出すような好事家は、このプレーントウシューズを注文するとも聞きます。
曰く、職人の感性が最も色濃く反映されるのが、このプレーントウダービーシューズだというのです。
確かに羽根の位置、切り返し、ラスト(木型)等々で見え方全てが変わってしまう靴です。
シンプルイズベストにして、そのベストを生み出すのが難解なのは、とてもよくわかる気がします。さて、今回もプレーントウダービーシューズを紹介していきましょう。
クロケット&ジョーンズのプレーントウダービーシューズ、HIGHBURY(ハイバリー)です。
目次
クロケット&ジョーンズ HIGHBURY(ハイバリー)
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クロケット&ジョーンズのHIGHBURY(ハイバリー)はVフロントプレーントウダービーシューズのひとつです。
プレーントウダービーの靴は、切り返しがないため、得てしてノーズがすらりと長く見えるものですが、このハイバリーに関しては、その特徴を極限まで高めたような靴です。
その秘密がこの靴に使われているラスト348にあります。
ラスト348
ラスト348の先端にかけてナローになっているシルエットがノーズを長く見せます。
ラスト348は本国イギリスでは一番人気のベストセラーのラストとなっていて、イタリア靴を彷彿させるチゼルトウが研ぎ澄まされたような印象を与えてくれます。
コンチネンタル的な解釈をよく取り入れるクロケット&ジョーンズの靴の中でも、特に上品なロングノーズになっているのが特徴です。
このラスト348でひとつ気になるところは、正直に申し上げて日本人には少々踵の大きいラストだと思うところです。
ただし、クロケット&ジョーンズの革はしなやかで、履き馴染んで返りがついてくると不思議と最初の踵のゆるさを感じさせない、収まりの良い靴へと変化していきます。
コンチネンタル的Vフロント
また、その羽根の切り返し方もちょっとイギリス靴的な雰囲気ではありません。
Vフロントの中でも、羽根のV字のラインを深く入れずに、ボールジョイントよりもだいぶ後ろの土踏まずよりちょっと前くらいのパートで小さな山を作るようなラインをとっているのが特徴的です。
この切り返しの意匠も何となく、イタリア靴やフランス靴といった、コンチネンタルスタイルに影響を受けていると感じます。
靴のサイドのエッジラインも際立つようなスタイルで、チゼルトウが際立ちます。羽根の位置も後ろの方にあるので、よりノーズの長さを強調しています。
グッドイヤーウェルト製法+ダイナイトソール(シティーソール)
もちろん作りはグッドイヤーウェルト製法なので、オールソールによる本底の交換も可能です。
と、いってもこのハイバリーはもともとダイナイトソールのシティーソール仕様になっているため、ちょっとやそっとでは減っていきませんから、週1回程度の使用であれば、だいたい3、4年くらいは持つはずです。
クロケット&ジョーンズのダイナイトソールは、本家本元のダイナイトソールと製造方法が若干異なる別注品なのか、少し硬さがあり、擦り減りにも強い気がします。
また、シティーソールは従来のスタッドタイプとは異なるために、ソールに厚ぼったさが出にくいため、かなりレザーソールに近い雰囲気で履くことができます。
シンプルイズベストは自分の“カラー”が試される
着合わせは冠婚葬祭からチョークストライプ、チェックスーツ、ジャケパンスタイルなんでもござれ。
その着回し力の高さはシンプルイズベストからくるもの。
しかし、ンプルイズベストな靴ゆえに、自分のセンスがもろに反映される靴にもなります。
着合わせ次第でモダンなスタイルにも、極論を言えばダサくもなってしまいますから、自分のスタイルを煮詰めて履きこなしましょう!
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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