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秋冬になるとブローグシューズが履きたくなる
8月も折り返し地点に到達し、秋へと向かっていくシーズンへと季節は移り変わっていきます。
台風がどんどん日本列島にやってくる8月のお盆~9月の中旬は気候が緩やかながらも確実に秋の空気を運んできます。
私は8月のお盆過ぎに、一気に日暮れが早く感じるようになるこの季節の変わり目が昔からとても好きです。
夕焼け色に合う装いはどんなものがあるのか、日々探求しています(笑)
夏本番が過ぎれば、気温は高いままであっても、秋冬の装いが気になるのは人の気持ちだと思います。
秋冬になれば、重衣料の出番。
当然メンズファッションも春夏から比べれば重厚感はでます。そして、ファッションが好きな人からすると、この上なく楽しい季節の到来というわけです。
秋冬になれば、スーツやジャケットに柄物が増えるため、すっきりとしたデザインの靴よりも、華やかな雰囲気のあるブローグシューズが欲しくなるのは、一種お決まりの流れだと思っています。
特に今のメンズファッションの流れから言うと、モノトーン系のスーツが人気を高めています。柄でいえば、ハウンドトゥースやグレンチェックのグレー系は注目のようです。
ちょっとこの参考画像では合わせているシャツが壊滅的にダサいですが、白シャツなどでシンプルにまとめるととてもよく映えて、「わかっている感」が出せます。
そして変わらずイギリス調の流れが人気なので、チョークストライプなども引き続き注目が集まります。
こうなってくると、ブローグシューズの中でも合わせたくなるのがセミブローグやフルブローグといったイギリス的なアイテムです。
クオーターブローグであれば、控えめでいいですが、男らしさを演出するのであれば、やはりセミブローグ以上にはしたいところ。特にフルブローグはがっちりした質実剛健な雰囲気がクラシック好きにはたまりません。
フルブローグの靴はイギリス、アメリカ靴ばかりに注目されがちですが、北イタリアの華やかながらも控えな主張をする靴も実に見事なものが多いものです。
今回紹介するのはエンツォ・ボナフェのフルブローグです。
エンツォ・ボナフェ 1968mod
エンツォ・ボナフェの1968modはスクエアトウの木型を用い仕立てたフルブローグの靴です。
北イタリアのボローニャで作られているエンツォ・ボナフェの靴はイギリス靴と性質が近い部分があります。
デザインはやたらうるさいことはなく、控えめでしっかりと足元からその人のパーソナリティーを伝えるような朴訥とした印象があります。
やはりどこの国でも北の方になればなるほど、人の感性が真面目に、素朴になるということはある程度の共通点なのでしょう。
ウイングを描くパーフォレーションのアールも深くなっており、その姿はチャーチのチェットウィンドを彷彿とさせるようながっちりとした雰囲気です。
実際売り場に何のポップの張り出しもなく置かれていたら気が付かない人の方が多いと思います。
イタリア靴というと、色遣いやデザインの派手なものを想像される方が多いかと思いますが、これは南イタリアのナポリなどのイメージです。ボナフェのようなボローニャにある北のほうのブランドでは、シックで落ち着きのあるデザインを打ち出すメーカーが多いのもまた事実です。
ただし、一見したデザインの面ではそう感じるかもしれませんが、細部を見ていくとイギリス靴とは大きく異なる点がいくつもでてきます。
まず、このボナフェのフルブローグの場合、カカトはシームレスになっています。
工場で大量生産しているイギリス靴(それでも人の手をふんだんに使うので、いわゆる世の中の大量生産品とは意味合いがちょっと違ってきますが)とは、大きく違うところがまずここにあります。
従業員数も多くないために、良くも悪くもマシンに頼りすぎない、手作業の工程を多く残しています。ですから、シームレスのような手仕事をいれて靴を作ることができます。
手吊りによってラストにしっかりと吊り込まれた甲革は立体的にもなります。
そしてボナフェといえば、ファット・ア・マーノ。九分仕立てになりますので、最後の出し縫い以外はみんな手作業です。
そういった手作業によって作り込まれる「味わい」がイギリス靴では出せない魅力となるのです。
見た目だけでなく、履き心地にも影響されるのです。
エンツォ・ボナフェの靴は九分仕立てのため、やや高価な靴になりますが、それでもデュプイの高級カーフを使用して、この値段であるのであれば、それはある種破格でもあるのです。
イギリス靴だけでなく、色々な店を回って見て比べてみて頂きたいです。
なぜボナフェがこの価格になっているのか?
革靴初心者の方でもその疑問を理解し、納得できる点が作り込みの素晴らしさを物語っています。
イギリス靴に注目していた方はここいらでイタリア靴にも目を向けてみると、思いもよらぬ靴と出会えることでしょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。