前回、グッドイヤーウェルト製法ついていろいろと紹介しました。
タイトルにもなっていますが、今回紹介するのはこれも革靴について調べていると出てくるマッケイ製法についてです。
マッケイ製法に関しても雑誌などにおいて、ちょっと過剰に紹介されているかな~と感じる点があるので、マッケイ製法の構造や長所・短所について紹介していきたいと思います。
目次
マッケイ製法とは?
マッケイ製法はもともとはイタリア•マルケ地方の伝統技法です。マルケで作られたからマッケイ製法なんですね…ということでもないようです。
本格的な製法が確立されたのは1858年。アメリカのマサチューセッツ州でライアン・ブレイクがマッケイ製法用の機械を開発しました。その後、ゴードン・マッケイが機械の権利を買い取り、改良を重ねることで現在のマッケイ製法の原型ができあがりました。
引用;マドラスHPより https://www.madras.co.jp/journal/Story/2017/04/post_10.html
グッドイヤーウェルト製法もそうですが、合理的な方法を作り出すことに関して、やっぱりアメリカってすごい。
マッケイ製法はグッドイヤーウェルト製法に比べて、構造が単純です。甲革もまとめて本底に縫い合わせて作られているためです。
ウェルトをつけて、すくい縫いをする工程がないので、製造もずっと簡単で低コストになるという特徴があります。
ウェルトをつけないので、デザインの自由度も高く、極限まで無駄を排し、コバが張り出さない美しいフォルムを作り出すことも可能です。マッケイ製法はコバをつけないで作成することが出来るので、見た目がスマートで美しい靴になる一方、コバがないことによって、バンパーの役目を果たす部分がないため、注意して履かないとあっという間につま先の甲革が削れてめくれあがってしまいます。
最新の注意を払っても、いずれはそういった傷がつくのは不可避なので、その点も留意して購入する必要があるでしょう。
マッケイ製法の特徴
まずは分解図をみてみましょう!
この分解図をみると、甲革とソールをいっぺんに出し縫いによって縫い上げていることがわかります。
グッドイヤーウェルト製法と違い、リブテープなどの副資材がないので、反りも良く履き馴染みが良いのが特徴です。
その履き馴染みの良さを活かすために、革も柔らかなものを採用していることが多く、イタリア製のマッケイの靴はその特徴が顕著に表れているものが多いです。
グッドイヤーウェルト製法の反りの悪さを助長している一因はリブテープにあるので、これがないだけでも随分履き心地が柔らかに感じるのです。屈曲性の良さや靴の軽量化を求めるとマッケイ製法の靴を選択候補に上がります。
マッケイ製法はリブテープを使っていないので、縫いシロの厚み分にコルクなどのクッション材となる中物を敷き詰められる余裕はありません。
通常グッドイヤーウェルト製法の靴に敷き詰められているコルクが4ミリ~6ミリほどあるのに対して、マッケイ製法は1ミリ~2ミリほどの薄いスポンジが入っているか、全くクッション材となる中物が入っていないものもあります。
そのため、クッション性にはあまり期待できないため、長時間歩行や立ち仕事には一般的に不向きとされます。
その分軽いため、デスクワークなどのオフィスワークが中心の方などには向いていると言えるでしょう。ただし、これはあくまで一般論で。マッケイ製法の靴の方が歩きやすく、疲れにくいという方も中にはいます。
マッケイ製法が雨に弱いって本当?
マッケイ製法の靴は出し縫いは間隔も広く、ソール自体も薄いため、雨での水がしみ込みやすくなっています。そのため、この話に関しては、間違いなく雨に弱いと言えるでしょう。
ただし、レザーソールのものであれば、ラバー半張りをしたり、ゴム底のマッケイ製法の靴を選ぶなど工夫をすると、改善されるでしょう。
しかし、マッケイ製法特有の反り返りの良さが失われるという点があります。
マッケイ製法の長所
- 軽い
- ソールが柔らかく履き馴染みが良い
- 履き馴染みの良さを活かすために、甲革にも柔らかな革を採用していることが多い
- デザイン性に富んでいる
- スマートなデザインに仕上がっている
マッケイ製法の短所
- ソールが削れやすく、オールソールに至るまでの時間が早い傾向にある
- コバなどを削ったものは、バンパーになる部分がないため、甲革に直接ダメージが起きやすい
- クッション性が低く、長時間の歩行や立ち仕事には適さない
- 雨に弱い
- 構造上、中底に出し縫いの糸がむき出しになるので、慣れないと変な履き心地になる
マッケイ製法の靴の見分け方
よくグッドイヤーの靴と、マッケイ製法の靴の見分け方はどのようにすればいいのでしょうか。マッケイ製法の靴は甲革も含めて、ソールを直接縫い合わせているため、中底に出し縫いの糸が見えます。
この糸が見えれば、マッケイ製法もしくはそれを応用したボロネーゼ製法の靴だと判断が出来ます。ただし、中底の上にフルインソール敷かれている場合は、インソールによって隠れて見えないときがありますので、その時はインソールの上を手で触ると、出し縫いの糸がわかります。
雑誌などでは、コバにステッチがあるかどうかで見分けろ、と紹介しているものがありますが、それは間違いです。
マッケイ製法の靴はわざとコバをつけることも出来るほど、製法によってデザイン性が損なわれないものです。ダミーステッチを施したコバもあるので、これだけでは見分けることは出来ません。
中底にステッチが出ているか否かという点で見分けるのが確実性が高いです。
また、マッケイの靴と混同されやすいのが、セメント製法で作られた靴。
セメント製法はただ接着剤で中底と本底を圧着するだけなので、デザインはいかようにでも出来る靴になります。
コバがなく、フルインソールで出し縫いの目視も触ってもわからないというときは、マッケイの靴かセメント製法の靴かいよいよわからなくなってきます。
そんな時は、靴を真正面から見てみましょう。マッケイ製法の靴は構造上、甲革を丸めて縫い上げるためふちが弧を描きますが、セメント製法の靴は縫っていないため、ふちに弧は描かれません。これは色んな靴を見ていかないと、なかなか見分けがつかないので、店員さんに教えてもらうのが手っ取り早いでしょう。
セメント製法の靴は、接着剤を使っているので、独特な匂いがするのも特徴です。スニーカーのような匂いがする革靴はセメント製法である可能性が高くなります。
気になるマッケイ製法の寿命。寿命は決して短くありません!
グッドイヤーウェルト製法で作られた、作りも革も堅牢な靴と比べれば多少の差は出るかもしれませんが、寿命という点に関して、私は決してマッケイ製法の靴で作られた靴が寿命が短いとは思いません。
マッケイ製法の靴は寿命が短いと言われます。
マッケイの靴はオールソールができない、もしくは1回しか出来ないと書かれている雑誌が非常に多いのです。
この偽情報によって
オールソールがしにくい=寿命が短い
という公式が出来上がってしまっているのです。
はっきり言ってそんなことはありません。
まず、マッケイの靴でも状態が良ければ、3~4回はオールソール可能です。
逆にすくい縫いと出し縫いが激しく絡んだ安価なグッドイヤーの靴の方がオールソールはしにくいので、そういった意味ではマッケイ製法の靴の方が寿命が長いといえるでしょう。
マッケイ製法の靴の傷みが気になってきたら、まずは靴修理店に持ち込んでみて下さい。よほどの傷みがなければ、オールソールに応じてくれるはずです。
中底も交換できるのが強み
マッケイ製法の靴は直接足に触れる中底の部分も薄く出来ているため、グッドイヤーウェルト製法のように、純正の木型を使って中底
を癖付けなくても良いのです。
そのため、中底交換も容易なので、その点をみると、グッドイヤーウェルト製法よりもオールソールがしやすいのです。
ダイナイトソールやビブラムポイントソールでオールソールはしづらいかも
マッケイ製法の耐久性をあげるために、オールソールするときにダイナイトソールやビブラムポイントソールによる、ゴム底でのオールソールするときは、ちょっと注意が必要です。
マッケイの出し抜いはかなり内側を縫うため、ダイナイトソールなどの丸いポイントに糸がかかり、耐久性に問題が出る可能性があります。
修理店に持っていけば、職人さんが色々と提案をしてくれるはずです。
まとめ
いかがでしょうか?
マッケイ製法の最大の魅力は素の柔らかさとデザイン性の高さ!
美しい靴の多くは、イタリアのマッケイ製法で仕立てられた靴の芸術性の高さは素晴らしいです。
また、マッケイ製法の靴は決して寿命が短いものでもないことを今回知っていただけたのではないかと思います。
グッドイヤーウェルト製法の項でもお話しましたが、私は、靴を長持ちさせるのはその製法ではなく、日々のケアだと思います。
マッケイ製法の靴を長持ちさせたいのであれば、型崩れを起こさないように、ぴったりとしたシューキーパーを合わせることもひとつですし、ラバー半張りして底の薄さをカバーすることもひとつです。
皆さんの愛情が革靴の寿命を延ばします。
ぜひ大切な一足を大事に履いてくださいね。
最後まで読んでいただきありがとうございます。