紺のブレザー 「紺ブレ」を考える 海がきこえる Ⅱ~アイがあるから~のワンシーンより

メンズファッション業界は今、アメリカとイギリスの服装、いわゆる「トラッド」な装いが主流になっており、イタリアのブランドも、テーラードスーツにスラントポケットやチェンジポケットを採用したモデルが出てきています。

そして、今、紺ブレに金ボタンなどが再注目されていると言います。
紺ブレというと80年代後半から90年代初頭に流行したものです。

メンズEXではおなじみのBEAMSのバイヤー、中村達也さんのブログでも紺ブレについていろいろと語っています。

バブル期に流行したスタイルが2017年になって再び流行しているというのが面白いものです。
景気回復が影響しているのでしょうか。

とはいえ、ほとんどの人が景気回復など感じない日々を送っていると思います。有効求人倍率と実際の景気の印象はもはや連動していないということでしょうか。
間違いなく、どんなに混沌とした時代でも、儲けている人はいるということなのでしょう。

さて、話を本題に戻します。
この「紺ブレの再注目」というのは、一部のファッション好きの、非常に狭義の意味で、紺ブレを捉えているのは明白です。

確かに一部のお洒落さんからは紺ブレを主体とした着こなしを披露していますが、そんなことをわざわざ雑誌で語るまでもなく、多くの中高生は紺ブレを着て毎日学校に通っているのです。
ブレザーに金ボタンというのは、流行り廃りがあるにせよ、いつの時代でもあるわけです。

つまりは最もベーシックなものの1つであるということです。

ここで、紺ブレについて、ひとつ面白い表現をしている小説があったのを思い出したので、紹介したいと思います。

これはバブルも弾けて終わった90年代の半ば、1995年に書かれた「海がきこえるⅡ~アイがあるから~」の一場面です。

海がきこえるについて

先に脱線しますが、「海がきこえる」は氷室冴子さん原作の小説で、ジブリによってアニメ化されている作品でもあります。

映画ではなく、スペシャルアニメとしてテレビ放映された作品なので、「となりのトトロ」や「千と千尋の神隠し」のようなメジャー作品ではありませんが、これがなかなか面白いのです。大学生の主人公がヒロインの女の子に振り回されながら、大人へと変わっていく様子を描いたもので、そういった意味では「耳をすませば」よりもずっとリアルな雰囲気があって、個人的に大好きな作品だったりします。
「海がきこえるⅡ~アイがあるから~」はアニメの後日談(原作とアニメは少し違うところもあるのですが)的な感じ。

詳しくは海がきこえるのWikipediaをご覧になってください。

ちなみにちなみに「海がきこえるⅡ~アイがあるから~」は実写化されており、主人公を武田真治さんが、ヒロインは佐藤仁美さん、そしてちょっかいを出す女先輩には高岡早紀さんが出ていたりと何かと豪華なドラマでもありました…。

さて、そんな「海がきこえるⅡ~アイがあるから~」の原作小説には紺ブレに関してこんな一場面があるのです。

「ねえ、なるべく見栄えのするカッコしてきてね」
「そんな高いとこでなくて、いいよ、ぼくは」
ごちそうというからには、今どきのイタメシ屋とか、フランス料理屋にでも行くつもりなんだろうかと少しどきどきして、気をきかせていうと、
「ばかね、みっともない男と一緒にいるの、イヤだからよ」
電話のむこうで情け容赦なくいった。
「ねえ、いつも拓って綿シャツとジーンズばっかりだけど、他にどんな服もってるの」
「どんなって……綿シャツとジーンズだよ。つまり」
「ジャケットとか持ってないの」
「……紺ブレならあるけど、合格の祝いに、親戚の叔母さんが買ってくれたバーバリーの」
「バーバリーの紺ブレ!」
里伽子は呆れたように叫び、ふたたび黙りこんだ。それは里伽子および里伽子の女子大の友人たちの間では、よほど情けない問答無用のファッションセンスであるらしかった

海がきこえるⅡ~アイがあるから~ P80より

と、このように90年代半ばには紺ブレブームの衰退が見受けられます。

というか「綿シャツ」という言い方がいかにも90年代っぽい!(笑)

バブルがはじけた後では、ブレザーのメタルボタンがいかにも成金の残り香っぽくて、あまりいい印象が感じられなかったのでしょうか。
また、この物語は主人公たちが大学生になったばかりの物語なので、彼女は、主人公が高校生の制服から抜けきらないファッションが許せなかったのかもしれません。
ヒロインが痛烈にダメだしするのもこれが理由なのかも?

しかし、この一連のやり取りのあと主人公はこのように言っています。

バーバリーの紺ブレザーでどこが悪いんだ? 立派な物じゃないか。

海がきこえるⅡ~アイがあるから~ P81より

私もこのように思います。
ブレザーはモーニングコートから変化して生まれたテニスジャケットなどから、さらに変化して生まれたジャケットと言われています。原型は1830年ころには出来上がっていたともいわれ、大変歴史深い服でもあるのです。
ブレザーのその清潔感あふれる佇まいは、学校、航空会社、軍隊など様々な社会組織において、制服として使われる要因のひとつにもなっています。

そして紺のブレザーはアイビー・プレッピーファッションにとっては、欠かせない存在でもあります。

この伝統をきっちりと理解し、骨子を捉えていれば、いつの時代においても見劣りすることなく着られるはずなのです。

例えば、今後金ボタンが今の気分と変わってきたらガンメタルボタンに変えて、アメリカンではなく、ブリッティッシュ風に切り替えてもいいわけです。

ブレザーによく使われるディテールとしてパッチポケットがありますが、これがスーツジャケットとは違う雰囲気を出し、よりカジュアルな雰囲気にまとまります。

この雰囲気によって、下をジーンズにしたり、靴もスエードのものなど遊びや幅が広がるのです。

確かにブレザーは使い方を間違えると酷く子供じみて見えたりするのですが、そこは大人のあわせで工夫を凝らしましょう。

タブカラーのシャツにクレストタイでガチガチのトラッドにしてもいいですし、ギンガムチェックのシャツなどを合わせて爽やかさを出してもいいでしょう。

輝けライフ!としては、やはり靴で全体の雰囲気を大人っぽく仕上げるのを提案したいです。

例えば、ウイングチップやセミブローグのようなトラッドなものをチョイスし、素材はスエードにして「高校生の制服」のような垢ぬけない雰囲気を一気に壊すなど、です。

こういうコンビなのも乙です。

その他にもいろいろと着こなしの組み合わせ方はあると思います。

しかし、こうやってみると服装の傾向も時代とともに変化するのがよくわかりますね。

いつの時代でも若々しく見られたいものですね。

私は、いつの時代でも「趣味がいい」といわれる控えめながら上品なスタイルを構築していきたいものです…。

色んな所にファッションのヒントはあります。
冬はファッションが楽しい季節でもありますから、この時期を存分に楽しんでみてはいかがでしょうか。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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