グレンソンの紹介をしていたら私のグレンソン好きの魂に火がついてしまいました。
よく思うのですが、イギリス靴がイタリア靴以上に雰囲気のある靴を作れるスタイルはいったい何なのでしょうか?
これに関して、私はセミブローグの靴だと思っています。
まずブローグシューズそのものが、イギリスやスコットランドのカントリーシューズに由来する靴ですが、イタリア靴の場合、フルブローグの装飾性が最も強いスタイルは、その装飾性を逆手にとって、イタリア靴ならではのきらびやかで艶やかな雰囲気に変えてしまえる力量があるものです。
しかし、セミブローグになるとちょっと違う。
セミブローグがフルブローグに次ぐ、装飾性の高さがある靴ですが、キャップが一文字になっているため、その表情は穴飾りがあるもののピリッと引き締まった雰囲気になっています。
このピリッと引き締まった雰囲気を出すという点に関しては、スーツや革靴など、現代の紳士服のすべてのルーツとなったイギリスに一日の長があると感じます。
このカントリーとタウンシューズの狭間に存在するセミブローグの靴は、やはりイギリスのほうが得意なのだと感じます。
今回紹介するのはGRENSON(グレンソン)のセミブローグシューズ、OXFORD(オックスフォード)です。
目次
GRENSON(グレンソン) OXFORD(オックスフォード)
GRENSON(グレンソン)のOXFORD(オックスフォード)は内羽根セミブローグのスタイルになります。
使用しているラストはグレンソン定番のセミスクエアトウであるラスト77です。
気持~ちショートノーズ気味のブリティッシュクラシックで、質実剛健という言葉がぴったりの靴です。
キャップの面積に対して、小さくメダリオンがあしらわれた靴です。
この小ぶりのメダリオンがなんとも上品ではないですか!
イギリスのブローグシューズのメダリオンは、モノによってはカントリーシューズそのもので、キャップをはみ出さんがごとく目一杯覆いつくそうとしているものもよくありますが、このオックスフォードは、タウンシューズとしての見た目の美しさを備えています。
パーフォレーションを飾るギザギザの意匠である、ギンピングはとても緻密にできています。このギンピングは、グレンソン以上の値をつけているブランドでも、あまりその処理がきれいでないところもしばしば散見されますが、グレンソンのギンピングはとても丁寧な仕事をしているという印象があります。
綺麗です。率直にいって綺麗ですよ。
さらにはソールは伏せ縫い仕様になっており、グッドイヤーウェルト製法の仕上げである二回目の縫い、出し縫いの糸が見えないように最後まできっちりと仕上げています。
しかもとても丈夫なレザーのソールで、ちょっとやそっとのことでは穴は空きません。ガンガン使っていきましょう。
ラスト(木型)は内ぶりに触れていて、歩きやすさも抜群です。
このグレンソンのラスト77の靴を履くと、土踏まずのサポートもよく感じられます。
また、ラストに丹念に革が吊り込まれているためか、はたから見ても、立体的でうねりのある靴の仕上がりとなっています。
これがカッコいいんですよ~。
良質なアノネイの革を使っており、耐久性と光沢感ともに申し分ありません。
いくら作り込みが丁寧であったとしても、使う素材が美しくなければ、靴の美しさは絶対に得られません。素材にも妥協しないのがグレンソンのクラフトマンシップなのです。
OXFORD(オックスフォード)といえば…
靴好きの方ならご承知かもしれませんが、イギリス圏の人は、紐の短靴のことを「オックスフォード」と呼びます。
さらに細分化すると内羽根式が「バルモラル」で外羽根式が「ブルーチャー」や「ダービー」、「ギブソン」なんて言ったりするのですが…
なぜ紐の短靴をオックスフォードと呼ぶのかというと、短靴を履いていた人がイギリス東部に位置する、イギリス圏最古の大学である名門中の名門、オックスフォード大学に通う学生がそのような靴を履いていたことに由来するそうです。
イギリス靴ブランドがつけるモデルネームですから、おそらく土地名から「オックスフォード」と名付けたのでしょうが、それにしても靴を作っているグレンソンだって、「オックスフォード」という言葉が靴の世界でどういう意味を持つかくらいは知っているはずです。
それを承知の上で、このセミブローグシューズに堂々と「オックスフォード」と名付けるところを見ても、グレンソンの自信のほどを感じ取ることができますね。
ハーフムーンのクラシックエッセンスがたまらない
ブリティッシュクラシックなセミスクエアトウをもったラスト77、繊細な作り込みなど、確かな質を携えたのがグレンソンが作る靴です。
ブランドのポジションから考えても、その佇まいは「いぶし銀」といった雰囲気で通の好きなポイントをくすぐってくる良品です。
最後にもうひとつ。輝けライフ!がこのオックスフォードの中でたまらないと感じるポイントは、レースステイの頂点である、カンヌキのシャコ止め部分を「ハーフムーン」という三日月型のレザーで隠している点。これはトリッカーズなどでも良く見受けられる、クラシックに忠実なイギリス靴がたびたび採用している意匠。これがあるだけで武骨に渋い靴に見えるから靴は不思議です。
確かな品質、いぶし銀的な実力派イギリス靴のグレンソン オックスフォード。
ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございます。